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七彩のボディ展

 

国内大手マネキンメーカーの七彩さんが、浅草橋のショールームでディスプレイ用ボディの展示会「Buste Bust Busto!」を開催しています。11月いっぱいのところ、会期延期したようですよ。

七彩オリジナル製品ではなく国内代理店契約を結んでいる海外メーカーの製品で、これまでなかなか手に入れることができなかったメーカーが新たに加わっての展示発表となっています。共通意匠となっているテーブルやフレーム什器も良く出来ていて、実にカッコいい展示です!

 

 

これがこの展示の目玉であり、七彩さんが日本の代理店となることに大成功した(これは実に画期的なことです!)創業100年のニュージャージーのwolfformのボディです。作りがとにかく上質でトータルデザインと雰囲気が抜群!!ワンポイントのエンブレムや縫製がカッコいい!!

 

カッコいいので使いたいと思ってるお店は数あれど、なんせメーカーに商売っ気がなくて、現地のお店に入って直接買うかウェブサイトのオーダーフォームで発注するしかないという感じのメーカーで、私も前職の時に売場で導入したいと何度も思いましたが調達スキルがなかったため(笑)断念していたものです。舶来物ですから、発注⇒船便による輸送⇒検収というプロセスを踏みますし、それなりの導入期間とお金が必要になりますが、導入しやすくなったことは朗報と言えましょう。

 

今から15年以上前の話ですが、前職時代にとある編集売場の担当バイヤー(超有名バイヤーです)が買付出張の際に偶然ブルックリンの店舗に入り一目惚れしてwolfのボディを買い付けてしまい、(ボディ購入はバイヤーの仕事ではないため)輸入担当に怒られつつも、新しい編集売場に導入されたんです。そのボディは今でも使用されていますが、そういう逸話もあって、私にとってもwolfのボディはなんだか特別な存在として認識されていました。ぜひ、直接ご覧になって触れて頂きたいプロダクトです。

 

 

これはwolfと同じくブルックリンにある創業85年のメーカー、スペリオールのボディ。こちらは七彩さんが代理店になって数年経ちましたが、雰囲気抜群にして割と使いやすい価格のため前職ではかなり重宝したプロダクトです。バリエーションも豊富ですし、作りもしっかりしていますからおススメですね。

 

 

こちらは創業150年のパリの超老舗メーカーであるストックマンのボディ。明治元年の創業です!

 

ボディ自体のクオリティもさることながら、ボディ形態、張地や各付属パーツに対するセレクトバリエーションの幅と、芸術的アレンジの効いた商品開発の姿勢がストレートに見て取れるプロダクトです。オリジナリティのあるベースデザインや、オブジェ系ボディのラインナップも見逃せません。芸術的なカタログがウリのメーカーですので、ぜひご覧になってください。

 

 

イタリアの超メジャーなマネキンメーカーであるボナベリ。

創業70年くらいですが、彼の有名なシュレッピーというアートマネキンで名を上げたメーカーです。

 

七彩さんは数年前からボナベリの国内代理店になりました。それ以前は、ビーズジャパンという小さな代理店さんが国内の需要に一手に応えてくださっていましたが、諸事情も含め代理店の交代劇がありました。私は今はなきビーズジャパンの皆様に大変お世話になっていましたし、色々な思い出がありますので複雑な心境ではありますが、ボナベリのプロダクトがより入手しやすくなったのは朗報と言えるでしょう。

 

マネキンのシリーズに対応したボディのランナップがあり、前述の2社とはまた違うテイストですが、一言で何が違うかと言いますと、ボナベリの製品は「着るものを選ぶ」のです。何にでも似合うかというと、そうではありません。それは、後述するドレスメイク用のものとは異なる独特の造形解釈が所以と思います。

 

 

そういえば、私の叔母(残念ながら若くして亡くなりました)はファッションデザイナーだったのですが、画家だった祖父の家に一緒に住んでいて、祖父のアトリエの一角に仕事用のボディを1本置いていました。生成色のそのボディにはいつもメジャーや色々な色柄の布が掛かっていて、針がたくさん刺さっていました。床にも針が無数に散乱していました。お洋服はこうやって作るのか・・と子供ながらに思ったような記憶があります。叔母が亡くなった後もずっと、祖父の家をたたむまでそのボディは床の針と共にアトリエに置かれていました。ファッションクリエイトの場にはボディがあるんですね。

 

上記も踏まえ、そもそもbody・・ボディとはどのようなプロダクトでしょうか。用途としては一般的に下記の二つに大別できると考えます。

①ドレスメイク(立体裁断縫製)用
②ディスプレイ用

 

①はもともとオートクチュール、オーダーメイドのために個人の体形を再現した作ったボディが起源ですので、そういう発注・制作もしてもらえますし、非常に多くの年齢・身長・体形のボディやパーツがラインナップされています。自分の売場の顧客にフィットするものをかなり繊細にセレクトすることが可能です。


①は②に使うことができるばかりか、元来プロダクトとして持っているテイスト故、(テイストに合えば)素敵に場を演出することができます。先にご紹介したwolfやストックマンなどは①ですね。
一方で、②は①には使えません。純粋な②用はFRP製のものが主体で、着せるためにあるからです。

 

なぜ①は②にも使えるのでしょうか。

服を着せられる・・・ それだけではないのです。

 

「用の美」「機能の美」があり、デザインとして美しい。
道具であり、それ自体がファッションを生み出すための器具である。
道具としての生立ちから、そのままでもテイストを醸成し素材や仕立てを受けとめ、質の良さを感じさせる。
朽ちてもそのイメージが変わらない。

「用の美」「機能の美」を感じるのは、ヨーロッパならではのデザインや意匠性と仕立ての妙がモノ作りとして反映されているからではないでしょうか。部品や付属器具一つ一つが合理性からくるデザインの味と個性があり、ミシンなどの工業製品の魅力と通じるものがあります。
②は「着せ映え用」でしかなく、①とはそもそも用途目的が違うのです。

その「見た目」だけを真似してもなかなか思うようなプロダクトにはなりません。前述したように、ヨーロッパのボディメーカーのカタログ等を見るとそのあたりがよくわかります。長年にわたり培われた国の文化であり、イズムであるからでしょう。

日本では「用の美」「機能の美」を前提とするセレクトはなかなか難しいですね。合う場と環境と商品がなかなかありませんから。ですので、実力のあるセレクトストアやスペシャリティストア、一握りのカッターさんの店舗や、テイストを醸成するためのディスプレイプロップとしてしか使いにくいのです。


 一方で 、「用の美」「機能の美」があるものは、着せれば確実に着せたものが良く見えます。しかも自然体に、飾ることなく。「着せ映え」のためのプロダクトではないので、人間が一番リラックスした状態で、ナチュラルな着こなしと着装感を醸し出します。フィットが違うのです。そうなりますと、デザイン自体、素材自体の良さがシンプルに現れます。それを理解しているブランドはボディの選び方と使い方が上手いんですね!

 

このような「用の美」「機能の美」のあるプロダクトは、ぜひ表から裏から、あらゆる角度から眺めまわして、触れてみて、アウトラインや造形の妙を目と指先で感じ取ってみてください。部品や構成物の一つ一つをじっくり観察してみてください。

 

そして、商品を着せてみてください。

色々な高さにして、色々な角度から眺めて、

複数体で様々に構成してみてください。

 

国内では①はキイヤさんのものが有名です。最近は、②でも①に負けず劣らず、①とも従来の②とも異なるコンビネーションのボディも増えてきました。ボディ一つとっても、様々な解釈とイメージの創り方がされていますので興味はつきません。
 

関心があれば、ぜひ七彩さんにお問合せしてはいかがでしょうか。

12月には東京と大阪で新作発表展示会もありますからね!