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VMD事業はSDGsに乗れるか

 

昨日、年末恒例の七彩さんの展示会に行ってきました。おなじみスパイラルホールです。昨年に続き、今年も自社オリジナルマネキンの新作を数多くお披露目し、什器は最小限、舶来モノも敢えて出品せず、というヒジョーに気持ちの良い、腹のすわった展示でした。

 

 

復権をめざす新しい時代のリアルマネキンの新作もあったし、アブストだけどメイクもヘアもバッチリ決められる秀逸なマネキンもあった!でも個人的にはマタニティボディとマネキンが素晴らしいと思いました!

 

マタニティウェア並びにベビー用品の売場作りを何度も経験しているんですが、毎度まいど、妊婦さんのマネキンには苦労したんですよね。シュレッピを妊婦仕様にしたこともありました(笑) マネキンも綺麗な仕上がりでしたが、このボディが七彩さんらしくカッチリ、上品な美しいバランスで良かったですね~。インティメイトボディの新作もありましたが、どうしてもこういう地道なラインナップに気を取られます(笑)

 

上向き加減でスッと自然に立っているような妊婦マネキンも見てみたいなんて思いました。

 

 

ところで、今回いちばん気になっていたのはコレですコレ。

ビオトルソー。

昨年の展示会では入口に展示してあって、100%に近い生分解の達成と、堅牢度・加工性を併せ持つすごい製品だと、ただしコストがまだ問題なんですよ・・みたいなお話でした。これはホントにスゴイ!

1年経って、どのくらい進化しているのか楽しみにしていました。

 

 

土(屋内・腐葉土)でテストしたら、2週間でここまで卓上ボディが分解(強度がゼロになる形状崩壊)したんだと!!スゴ!!

材料が100%植物由来によるバイオプラスチックなんだそうです。

 

バイオプラスチックのマネキンといえばヤマトマネキンさんのバイオマスマネキンが先駆的で有名、製法に関しても特許を取得されていますが、こちらは植物由来の成分比率で言うと100にはまだまだ届かないのだそうで、海外のマネキンメーカーで頑張っているところでも70%くらいなんだそうです。この七彩の製品に用いられている素材・製法ともにヤマトさんのとは別物とのこと。早く特許取りましょう!

 

なぜこの製品のことが気になっていたかというと、昨今の世の中の関心度の流れにSDGsがググっと来ているからです。国連が主導する「持続可能な開発目標」。持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲット。ありとあらゆる国の企業・組織が先を争ってこれに取組み、取り組んでいることをアピールしています。これは小売業・ファッションビジネスにも当然当てはまることで、SDGsに真摯に取り組んでいる事業者が、今後は優先的に企業や国から引き立てられ、それにより企業や国もSDGsに取組んでいる度合いが高まるわけです。ありとあらゆる企業・国・組織・団体が取り組んでいるんです。しかも具体的な目標を掲げて。

 

VMDの事業戦略を考えることはマーチャンダイジングプロセスを考えることとイコールなので、SDGsのことも意識せざるを得ません。VMD自体の問題というよりは、マーチャンダイジングのどの段階で、どうSDGsに取組んでいるか?取り組むことにするか?を考えねば先がないという時代になった・・と痛感しているのです。

 

ファッションビジネスにおいては、川上の生産工程でSDGsの観点による改革が素材工場や縫製工場で、あらゆる国や地域で行われています。リユースやりサイクルの様々なビジネスモデルもその一つ。

 

でも、VMDというフィールドで、なにか直接SDGsに則ったことがされているのか??何をすればそうなるのか??意識の高いメーカーさんはかなり前から環境配慮型の製品を開発されていました。ヤマトマネキンさんしかり。紙製ボディもありましたね。

 

買ったものは保管して、何度でも使う。

リースの推進。

造作・造形して使用後即廃棄・・ということをやめる。

 

これまでも意識してやってきました。が、限界があります。

 

この取組み、9・12の目標に設定できます!ぜひ業界企業一丸で!
この取組み、9・12の目標に設定できます!ぜひ業界企業一丸で!

以前、あるマネキンメーカーさんのマネキン工場の方々と意見交換会をしたのですが、「あなたにとってマネキンとは何ですか?」と聞いたらある方が一言、「ゴミです」と仰いました。

 

「私たちはゴミを作り続けているんですよ。なぜかというと、FRPとグラスファイバーで出来ているマネキンは自然環境下では分解されませんから、我々はそういうゴミを延々と作り続けているんですよ。」と。僕は常にそれを考えているんですよ!と。

 

本当に衝撃でしたが、マネキン製造事業者の抱える課題を、これほどまでに的確に捉えた言葉って他にあるでしょうか!?自虐的とはいえ、それをその場で仰った方を、私は心から尊敬しています。なかなかできることじゃありません。良い側面からも、悪い側面からも客観的に自分を見られるというのはスゴイことです。

 

私の心に響きましたし、これが業界的な、最優先で解決されるべき課題なのだと認識することができました。ちょうどその直後、SNSで業界人がSDGsという取組みのことをブワ~~っとシェアしていたように記憶しています。なので、尚更印象に残りました。恥ずかしながら、私はその時までSDGsという言葉も何も知らなかったのです。

 

SDGsというグローバルで世界標準の取組指標が出来た今、これをSDGsのゴールの中の何かに結び付けて解決しよう!近づけるように工夫しよう!とするのがマネキン製造事業者やVMD事業者の今の時代における自然な姿・必要な姿勢ですし、これをもって「VMDというフィールドでSDGsに取組む具体的なキッカケを掴む」のはヒジョー―――に価値のあることだと思う次第です!

 

小売業者だって、こういう取引先事業者の製品を使えば、それを通して自分たちがSDGsに積極的に取組んでいると、他にも様々ある取組事項と目標の一端に堂々と据えられるわけです。

 

前職では、SDGsの前段と言える様々な言葉に、仕事上で関わりました。

 

百貨店共通ハンガー(エコハンガー)のオペレーション。

3R(リユース・リデュース・リサイクル)の出発点ともいえる家電リサイクル法の通知と周知。

会社の総務部やあらゆる取引先各社はグリーン購入やISOの取得を盛んに研究していました。

クールビズにウォームビズといった、ファッションと電力消費低減の取組。

オーガニック・フェアトレード・ナチュラルダイ・サスティナブルといったワードをストーリーとしてもつ商品やブランドを扱うPOPUPの出現とVMDでの表現。


この頃、意識の高いファッショニスタたちはこぞってそのような商品を買い求め、そういうブランドを支持し、それらをライフスタイルに取り込み、大きなトレンドになりました。

ノームコアやウェルビーイングというファッショントレンドの源流と思います。


そしてついに、そのような「エシカル」=倫理的なトレンドを売場コンセプトに据えた「グリーン」という名の自主編集売場のストアプラン・VMDプランに携わる機会を得ました。仕事を通して、昔はエコと言われたことが、様々具体的な取組みとして売場や裏のオペレーションに出てくることを実感しました。

 

そのグリーンという売場は、今はもうありません。JR大阪三越伊勢丹の3Fにあったんです。担当は、アドバンスMDを得意とする若き優秀な女性バイヤーでした。アドバンスな人々は、まっさきにエシカルをビジネスに取り入れるんですね。ミネラルウォーターやヨガウェアなんかも扱うライフスタイルショップで当時は結構画期的でしたし、VMDでもエシカルを表現連動しようとし、当時最新だったヤマトマネキンさんのバイオマスマネキンを何体か使わせていただき、ヤマトの皆さんにもご協力いただいて樹脂に混ぜ込む天然素材を色々変えて個体差を出したり、色々実験的なことをさせて頂きました。これ、10年前のことです。あれから、劇的にバイオマネキンが流通しているかというと・・そうでもないですよね。

 

でも、そうは言っていられない時代となりました。

 

 

気候変動は年々ひどくなるし、グレタさんは昨日「今年の人」としてLIFE誌の表紙を飾りましたが、このままだと人類は環境破壊と紛争と飢餓の末に絶滅してしまうかもしれません。絶滅は免れても住める環境は少なくなり、格差は広がり、食糧難になって幸せな暮らしを送れなくなるかも。そんな未来はご免です!

 

まずはそれぞれの業界で出来る一歩から。

生分解するボディを広めましょう。小売業は積極的に使いましょう。

小さい発注も、いずれ世界規模になれば大きな持続的開発となります。

そのために、業界として手をつなぎ、競争ではなく共創していくのが理想だなと思います。VMD業界として、堂々とSDGsの取組みとしましょう!

高くてはダメです。安く買えるようにしてください。

マネキンもぜひ作ってください。

そして、既製品の型を用いてこの素材でこれまでのマネキンラインナップが変わらず製造できるような技術を開発してください。ガラス繊維に代わる何かを開発してください。

 

一方で、もしマネキンがぜんぶ生分解のものに置き換わったら・・・

分解できないFRPのものは廃棄されるのです。

それでいいのか・・・

 

FRPのリサイクル技術も進歩してきています。新しいものに置き換えたら、旧いものの対処も同時に考えねばなりません。FRP製品を、環境への負担の少ないやり方で滅していくか。これを同時に技術革新をもって実現していって頂きたいですね。日本発のイノベーションとして。

 

だから、堂々とSDGsを表現していない今回の七彩さんの展示はもったいない!!もっと出していきましょう!!というのが今回一番言いたい事です(笑)

 

そして私も、VMDとしてSDGsにどんな関わり方や貢献ができるのか、考えていきたいと思います。

 

帰宅後、七彩さんのビオトルソーのパンフレットを拝見しましたら・・

SDGsの記載がありました!次回はもっと堂々と!!