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刺激を頂いた展示会

 

毎年6月はマネキンメーカーさんの展示会が開催されますが、今年はコロナの影響をもろに受けて残念ながらどこも中止となってしまいました。

大掛かりに集客することができなくなったので仕方ありません。通常の展示会や営業活動は困難なうえに、発注を受けていたお仕事や現場も軒並み消滅ということでどこも大変厳しい状況ですが、各社、コロナ対策のアクリル板や、ソーシャルディスタンス確保のために立たせるマネキン、看板といった工夫商材への対応をされています。利便性・機能性の追求や工夫といった、マネキンメーカー、VMD事業者としての面目躍如といったところです。

 

そんな折、彩ユニオンさんが自社東京ショールームで7月から展示会を開催中との情報を得て、早速予約を入れて見学してきました。

 

三密を避ける観点から、見学は完全予約制とのことです。

ご説明のアテンドもして頂けるうえに、ゆっくりじっくり見ることができてむしろ嬉しいかも・・・

 

 

今年の展示もとても良かったので、ご許可を頂き備忘録を兼ねてブログにアップすることにしました。

 

 

昨年の展示会ではマネキンが少なくて新作什器を中心とする内容でしたが、今年はショールーム2フロア構成(什器1フロア、マネキン1フロア)で両者のバランスが良く、マネキンマニアも存分に楽しめます。

 

本展示は、2020 SAIUNION STYLE 「TRYANGLE」というタイトル。

TRYは文字通りのトライで、

ANGLEは角度や立場。

このようなキビシイ状況下だからこそ、見方の角度を変えてモノづくりに挑戦してます!という心意気。

 

 

まずは、彩ユニオンさんが代理店をされているオランダのハンスブートマネキンのラインナップがドーンと出迎えてくれます。時節柄マスクをしたプレゼンテーションになっていますが、マスクがきちんと装着できていることにシンプルに感心。

 

マネキンの展示会ではマネキンの特徴を最大限に引き立たせるメイクや衣装をまとわせて展示することが多いので、「素の状態」もキッチリと見たい私はいつもモヤモヤするのですが(笑)、この展示会ではほとんどのマネキンが服を着せていない素の状態で展示されています。

造形の妙も器具の取付の様子も手に取るように判るので良いですね。

 

 

昨年の展示会で写真を見せて頂き驚愕した、ハンスブートの新作マネキンMUSEシリーズ。フォーメーションを完全シンメトリーにして展示していますが、完全シンメトリーは見た目だけでなくデータ・数値上もです。

造形設計はソフトウェアで行い3Dのデータとして扱われ、それを3Dプリンターで出力したものを原型にして製品化しています。

 

実際にシンメトリーフォーメーションを目の当たりにすると、その存在感とスケールに圧倒されます。もちろん、単品単体で用いてもその存在感の放ち方は変わらないでしょう。

 

側面立ちの首・型・背中にかけての絶妙なライン、コンポジションとして見てもメリハリを醸し出すヒップラインがとても魅力的。

実際に商品を着せて、店頭で使ってみたいですね~~・・・

場所も着るものも選ぶマネキンですが。

 

 

このマネキンに関してはマスクを着けていないところを見たかった!
このマネキンに関してはマスクを着けていないところを見たかった!

 

LIFEという彩ユニオンさんオリジナルのシリーズ。ベーシックで使いやすそうな腰吊の抽象マネキン。どんな年齢・テイストにも対応できそうな、リラックスした立ち姿。ヘッドの脱着ができますが、外したときの首の見え方が造形的にバランスが良く、またヘッド軸の差し込み穴も絶妙に見えない角度になっています!

 

 

他にもマネキン・トルソーが色々ありましたが、お喋りに夢中で写真を撮り忘れました。。新作の木腕があって、二の腕の半ばから先が取り外しできる仕様になっていました。着せ替えの時に腕を型から抜いたり、袖に長い腕を通す苦労が軽減される素晴らしい仕様です。

 

レディスのボディビルマネキン、ゴッリゴリのメンズの隣にいても存在感があり、とても新鮮でした。写真撮ればよかった。

 

 

什器ですが、本展示ではかなりの種類のラインナップが出ていましたが全て新作だそうです。昨年まで幅を利かせていたフレーム材とかトラス系の什器はなく、とても新鮮です。

 

シリーズ毎にデザイナーさんが違うとのことで、若手を含むデザイナーにそれぞれ開発の予算が当てられて、切磋琢磨しつつ独自のデザインによる什器を開発するのだそう。

 

どのシリーズを見ても、利便性・機能性・拡張性・新規性、そしてデザイン上のこだわりと工夫が感じられます。これが彩ユニオンさんのイズムでしょう。自由闊達でチャレンジを奨励する企業風土であり、その結果としてトータルで彩ユニオンさんらしいラインナップが出来上がっているところが良いですね。

 

 

HACOというシリーズ。

 

ナチュラルな白木の什器ですが、極めてシンプルで一貫したテイストを持ちます。VP用のマネキンフレーム、壁面什器、置き什器、高低テーブル、ゆったり目でカーテンの重ねも十分な1000角フィッティングまで、共通のフレームデザインにより自在に構成することが可能。これでそのままお店が作れますね。特筆すべきはその軽さで、W1600あるテーブルも女性が一人で簡単に動かせます。板の中が中空で段ボール構造になっているそう。

 

パーツの堅牢性の観点で、長期的使用でも変化なく平面を維持できるのか、個人的に興味があります。軽くて丈夫で安定性があり安全なら言うことありません!

 

 

marcheというシリーズ。

 

近年どのVMD業者さんも力を入れている、シズル感と立体感の出る市場型雑貨什器です。テクスチャー感があるけど均質の合板と、黒のフレームをコーディネイトして大人っぽいムードです。POPUPに良いですね。

 

手前の、H2100、W1200、D600の両面使い2段テーブルは絶妙で、椅子を置けば飲食も事務もできちゃう。奥行もそこそこ深いから会議もできちゃう。

言うまでもなくイイ高さに棚が付けられちゃう。

梁には配線ダクトも付いてるから照明も付けられるし、フレームは折り畳めちゃう。私、オフィスを持つことができたらこのセッティングを2台入れたいですマジで。

 

 

控えめに展示されていた新作ガラスケース。

 

ローケース・ミドルケースの2種類ですが、絶妙な高さ設定で、薄型のローケースでもちょうど目線に展示品が来るような高さ。近年、ライザーやディスプレイ用平台も高さが900~1000くらいが良く使われるようになっていますのでガラスケースもアリでしょう。

LEDテープライトによるシンプルで真っすぐな照明も良いですね。

 

手前のテーブルの天板はフレーム部を残して外すことができ、外した凹みにガラスケースを上載せできるという面白いシステム。

ガラスケースの脚元がテーブル調に抜けているとか、テーブルと統一デザインで構成できるというのはなかなか斬新です。

トラスっぽいハードな質感の黒いフレーム脚もありました。

 

 

SA-LOTというシリーズ。壁面構成タイプですね。

 

H2400、W1200、D600を基本ユニットとするニッチタイプの壁面什器ですが、付属品としての展開機能のバリエーションが半端なく、周到に計画すると展示のような長くて表情のある壁面を構成することが可能です。単品什器をつなげたとはとても思えません。

 

側板が着脱可能なのと、設置自由度の高い白い縦仕切りフレームの効果でしょうか。この自在フレームと壁面ニートモジュールの融合で、本当に多様な展開機能の構成が可能になっています。

ミラーが実は縦長のストックボックスになっていたり、工夫が満載。

 

最近は古臭いと敬遠されがちなニートモジュールですが、ここではアップトゥデートなデザインに見えるし、ニートモジュールがあることで長い壁面に見えるということでしょうから面白いですね。

 

よく現場で対処に困るビジュアルパネルも、ミラーマットやフックがなくても上手く設置できますよ!というオプションパーツもあるという。

よく考えられてますよ。カタログには載っていないので正規オプションではないかも。

 

 

TRUNKというシリーズ。

 

トランクを縦置きにしてパカっと開いたような形態です。バッグ屋さんのディスプレイ棚とかでよくありますね。蝶番を軸にして、角度を付けた屏風的・結界的配置ができます。背パネルを外せば写真のように見通しが作れますし、当然中には棚やハンガーが付けられます。D600に対し300の部分にパネル取付ができるので、D300の両面展開も可能です。空間を仕切ったり開けたり、面白い展開空間構成が出来そうです。

 

背パネルは有孔ボードで汎用性も高いし、特筆すべきはモジュールの側面前後端に縦にLEDテープライトが付いていることです。什器照明としての実効果だけでなく、視覚的なデザイン性も高いと思います。

 

 

WOODENというシリーズ。

 

ラスティックな仕上げの重厚な什器ですが、これはエイジング加工でも塗装によるものでもなく、個性豊かな本物の廃材によるもの。

廃材と言うか、ベトナムで廃棄寸前の古い木製パレットを見つけて即購入、それを現地で什器に加工・製造しているのだそう。表面仕上げはキッチリ行われていますが、風合いは紛れもないホンモノ。新しいお店でそのまま使えそうです。納期はかかるそうですが価格は案外安い!ということで、これまたバリエーション豊富ですし、結構売れるのでは!?

 

撮り忘れましたが、上の絵にもあるようにブラックボード風の看板もあって、これがなかなかパンチ効いてました。

 

 

CASAというシリーズ。

 

フレームに多様な機能を取り付けて、汎用性をもって使用できるユニットですが、ここでは上部フレームを取付けてH2700のハイウォールを構成、腰板付きの対面カウンター仕様にして飲食ブースの提案になっていました。面白いのは、全く違和感なくよこにトルソーのVPステージをつなげていたり、商品展開の什器をつなげている点です。柱を中心に四方をグルリと囲って構成していました。配線ダクトも付いているのでスポットも付けられます。

 

飲食ブース向けのカウンター用リース什器はどこも開発していますが、これはそれ専用という訳ではありません。でも、飲食用ブースとして見てもなかなかの完成度です。

 

 

POLKAというディスプレイ台のシリーズ。

 

会場をご案内、ご説明くださった石川さんご自身がデザイン・設計されたそうです。陳列のリズム感とか、ポルカドットからPOLKAという名前を付けたそうですが、この有孔ボードの設計が素晴らしく、50ピッチで均整のとれた有孔ボードを腰・天板・上置きまで全てに用いており、しかも同じ仕様のサイコロや卓上鏡、H1800の疑似柱まであります。

 

孔に差し込むピンも、オプションパーツも、すべて白で統一されているしアクリルとの相性もバツグン。

 

ディスプレイやVMDが苦手な人にでも、簡単に綺麗にディスプレイが出来る!というのを設計思想にされたそうで、フレーム取りやネガティブスペースも綺麗に入れられるし、縦も横もピシっと揃えられます。

使い手のアイデア次第で組合せや展開表現が無限に広がりそう。

私はこの有孔ボードをオフィスの壁という壁に張りたいですマジで。

 

利便性・機能性・拡張性・新規性はもちろん、加えて陳列自体の「美観」を創り出す。美観がポリシーであり設計思想。というふうに勝手に解釈いたしました。

 

女性らしい細部にまで至る細やかな施し。オプションパーツまで真剣にプランしたらとんでもなく高額になりそうな予感がしますが(笑)、これは一度でいいから使ってみたいですね~。しかもダイナミックな単位で。

 

 

彩ユニオンさんの東京ショールームには何度もお邪魔させて頂いてますが、ここのラスティックでモードな雰囲気とマネキンや什器のムード・デザインが完璧にマッチングしていて、とても没入感があります。

 

私が授業をしている大学のVMDに関心がある学生や、自分達で作ったモードクリエーションを工夫をして展示してみたい学生を、こういう場に連れてきて見せてあげられたらきっと創造力を掻き立てるだろうな・・・と気付いてしまった(笑)

 

そういう学生がいればささやかに募って、展示会に連れていってあげたり、ショールームの什器や家具に作品を並べたりマネキンに着させてあげたい・・・

そんなことを画策しようかな・・・

などと一人勝手に妄想を膨らませるのでした。

 

刺激をたくさん頂きました。ありがとうございました。

 

展示会は9/18まで!