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サステナブルなマネキンも、VMDXも

 

10/18~20に東京ビッグサイトで開催された「第1回サステナブルファッションEXPO」。

 

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、VMD事業はまだまだ回復が厳しく展示会等のお話も聞かない中、モードセンターさんが果敢にもブースを出展とのこと。これは見に行かないと!!

      

 

新聞、ニュースのみならず、大学の授業でもVMD協会の中でも話題沸騰しすぎのサステナブル。サスティナブル?サステナブル?発音からするとサステナブルが近いのかな・・今までサスティナブルって書いてたけど・・

 

今回はマネキンメーカー モードセンターさんのブース拝見と、アダストリアの木村社長の基調講演を聞くのが目的でしたが、やはり今時点の「サステナブルファッション」の状況を把握せねば!仕入と選定の展示会ということですからどんな切り口の商材があるのか把握せねば!ということで、ファッションワールド東京の傘下で並列開催の他のEXPOも含め会場内はすべて廻ってきました。

 

廃棄衣料品から作る繊維リサイクルボードによる棚什器・・とか、バナナの皮を再生して作るテキスタイル・・とか、在庫ロス低減のための製品染色・・とか、パッとみて判るキーワードを頭の中のメモに収集して歩きました。近年は販促物展示会とかギフトショーなどでもサステナブルな取組みの商材がお馴染みなこともあり、それほど目新しいという印象はありません。それくらい、社会的に必須であたりまえの前提となったということでしょう。たくさん集客しているブースは興味深いですね。

 

 

さて、モードセンターさんのブース。

前職時代から懇意にして頂いているご担当者様と2年半ぶりくらいに再会。いや~嬉しいです。

 

この方はとてもフットワークが良く、何ごとも果敢に攻めてトライされる方で、いつも興味深い製品開発のお話を聞かせてくれます。前職時代は、現場から難易度の高い相談が来て相談すると必ず具体的解決策を提示してくれる頼もしい営業さんでした。

 

今回の出展もこの方の発案・企画によるもの。この時期にVMD事業者がブースを出すことはチャレンジングですが、とても意義がありますよね。

 

今回は中小企業庁からの助成金も使いながらの出店とのこと。サステナブルな事業に助成を行う制度があるとのことですが、ほとんど知られていないんですって。困りますね~・・・

 

 

ブース自体は、フレームからこのような棚組み、ステージまで、すべてモードセンターさんのレンタル什器。どれも新製品のようです。

 

什器レンタルは古来より伝わる商売ですが、サステナブルであることに違いありません。上は3D造形製作の展示。サステナブル?

 

 

L(エル)という名前の、L字フレーム組み什器。シンプルで細身、ミニマルです。白のMDがとても映えます。白のMDは売り物ではありませんが皆さん気になるようでやたら触られていました(笑) 

 

無垢な白、無垢な素材感はサステナブル感を纏う・・といったところ。

 

 

今回の目玉はコチラ。ペーパーマネキン&ペーパートルソー。

 

展示されていたものはまだ開発段階のサンプルですが、群馬の鶏卵会社と連携して、回収した再生紙製卵パックをパルプ状に加工し、ダルマ作りと同じ張子の製法で作ったそう。

 

結構固いんですよ。

 

 

トルソーの中身は空洞。強度を増す構造などは検討中とのことですが、触った感じは丈夫そうです。

 

 

トルソーのラインナップ。

 

とにかく、風合いが良い!

再生紙独特の質感もあると思いますが、やさしく、温かみがあって、とても良いムード。色合いも良く、このまんま使ってサイコー・・・ってやつです。

 

 

マネキン。現時点ではマネキンのサンプルはこの紳士用のみ。

 

下に積もっているのは実際の卵パックですって。

 

この、パルプっぽい質感・・・

何とも言えないラスティックなムード・・・

 

トルソーもそうですが、素材そのもの。見た瞬間に理解できます。

アートっぽくもあります。おそらく量産しても一体一体個性が出るでしょうし、グレードの高い服、デザイン性の高い服を纏ってもまったく負けない、むしろスタイリッシュなムードを出してくる製品でしょう。

 

気になるのは上の写真で見て判る通り、パーツのパーティングラインや接合点の処理だったりしますが、それはデザインの一部であると割り切れると感じました。

 

最大の課題は強度・堅牢性だと思われます。マネキンやトルソーは頻繁に着せ替え、バラされ、倒され(笑)ますので、凹まないか・・というのもあるし、表面のパルプが削れて着装品に付着しクレームやロスになる・・と言った可能性が、今はありそうです。

 

クリアーコートして表面擦れ予防したサンプルもありましたが、色や素材感がまるで違っていて残念でしたし・・可能であれば紙のみがいいですよね。表面仕上げとして和紙を貼ったり、ご担当者様が仰っていたように漆塗りのような手法をとったり・・と、様々な解決法があるでしょうし、仕上げは採用企業様それぞれのオーダーであっても面白いですね。店舗の担当者が完成まで一緒に参加したり・・完成までのプロセスも商売になりそう。

 

いずれにせよ、本製品として市場に送り出す前に、どこかのお店でテスト導入してみて1カ月、3か月、半年・・・と使い倒してみる実証実験が必要でしょう。堅牢性は問題ないか。表面はどのくらい擦れるのか。何ヶ月くらい取り替えずに持つか。トルソーは足まで紙にできるか。マネキンに靴は履かせられるのか。腰吊りは可能なのか。軽さで好評を得ることは可能か。などなど・・・

 

お店側は最新のサステナブルツールの開発に貢献でき、しようと思えばアピールもでき、メーカーはそのツールを提供してデータを取ることができる。改善の要望も集められる。どこか意識の高い企業の店舗様、VMDご担当者様、VPやPPでテスト導入してみてはいかがでしょうか!

 

とはいえ、製品化にはまだまだコストがかかるそうで、レンタルした場合は通常の倍くらいのレンタル料金になる見込みとのこと。国も、こういう製品をできるだけ安価で流通させられるように、小売業者が経費で諦めずに使えるように、単価を下げたりメンテ・取替がしやすくなるよう、こういった開発努力をしているメーカーさんに助成金を出したりできないものでしょうかね~。

 

 

もう一つの目玉がコチラ。

バーチャル展示会のシステム。

 

最近よくある3DCGのVR系のやつ??と思う訳ですが、ご説明を詳しく伺うと主旨はまるで違いました。

 

 

モードセンターさんの東京オフィスにはショールームがあって、レンタル什器やマネキンを展示しています。そのショールームを使って、マネキンや什器などもモードセンターさんのを使わせてもらって、場合によっては装飾や造作もしてもらって、ショールーム内に展示会場を設営し商品を陳列し、ディスプレイも作る。

 

そうして出来上がったホンモノの展示会場を撮影して3Dデータにおこし、バーチャル空間として歩けるようにした・・というものです。

写真のサンプルはフルCGに見えますが、実は実際のショールームそのもの。ホンモノなのでリアリティが違います。植栽も照明器具も実物。天井のキズも実物。最近は博物館や美術館で盛んに行われていますが、あれよりも行動の自由度が高い印象。

 

システム自体はモードセンターさんの自社開発だそうですが、googleマップとの連携が可能だったり。面白かったのは、モードセンターさんの東京オフィスのビル内が入口からショールームまで、階段を含めスキャンされていて、googleマップのストリートビューからそのままビル内に入れ、階段も昇れて、踊り場からショールームに入れる・・という。

ホント、バーチャルだけどリアル。

 

展示会場は見た目はホンモノの空間なので、スケール感や見える高さも違和感なし。言うまでもなくこのバーチャル空間内に動画を配したり、ECに繋げるボタンを付けたりも自由自在。もっと言うと、VRゴーグルoculus着装による体験も可能だそうです。

 

モードセンターさんのショールームを使わなくても、自社のショールームで同様の設営をしてバーチャル展示会ができるわけですね。小売の展示会のみならず、会社案内や学校案内、工場見学なんかにも幅広く使えそうです。

 

無論、3DCGを用いたVR店舗・空間との融合も可能。そういうVR店舗の設計もされていますし、実空間にARでオブジェクトとしてVR店舗を出現させることも可能とのことでした。

 

 

私は最近、仕事でも学校でも「VMDX」というコトバをよく使っています。私の造語ですけど。

 

VMDによるリアル店舗ベースの視覚的展開表現や店舗作りとしてのノウハウは、そのままVR店舗やウェブサイトの店頭設計や視覚的展開表現、商品の美観陳列などにに応用できます。

 

その応用の幅や自由度、表現度はリアルよりも飛躍的に高まる一方で、VMDノウハウを持つ人がそれに取組むと、VR店舗やウェブサイトでも統合された統一感やテイストによる「視覚的表現洗練度」や、店舗の買い廻りやすさや商品の見つけやすさの「設計精度」が増すであろうということを、VMDノウハウのDXへのシフト・・「VMDX」と勝手に呼んでいます(笑)

 

いまVMD業界界隈では、DXというコトバと、昨年来急激に浸透した現実に戦々恐々としています。リアルからEC・VRの世界へと商売の場がシフトし、仕事がなくなるんでは!?という危機感です。DX以前から、リアル店舗の売上低迷が顕著になってきた際に真っ先に削られたのがショーウィンドウなどのディスプレイ実施予算で、この時点でVMD限界説というコトバも流れていました。デザイン・施工業者様の視点ですが。

 

VMD、限界なんでしょうか。。

 

私は、VMDXにマインドシフトすればまだまだVMD実務頑張れる・・と思っているのですが、このモードセンターさんのバーチャル展示会を拝見させて頂き確信できたのは、現物の展開をVRの世界にそのまま転換するということは、最上の状態で出来上がった売場展開を撮影する必要、データ化する必要があるということなので、VMDは相変わらず重要じゃないか!!ということです。

 

マネキンだって、ブランド特性やテイストに合わせてちゃんと変えられる。なんせやってるのがマネキンメーカーさんですから。VR空間上の3DCGマネキンはまだまだ発展途上だし。什器もしかり。

 

3Dでグリグリ動くけど、基本的には写真だから画面上では「切り取られたイメージ」「風景」に見える訳です。VRゴーグルを装着したらリアルな空間の風景です。

 

VMDは店頭を「風景」として捉え、品揃えの陳列のさまを風景画のようにオブジェクトの配置・配列と捉えるのと同義です。その部分の設計、景色としての売場表現・展開表現をトータルで美しく決めるには、変わらずVMDのノウハウが要りますよね!このような「リアルのバーチャル化」に際しては、まだまだVMD稼業の活躍の余地がありそうです。

 

リアルのバーチャル化・・・これもVMDXと言ってよいでしょう。

 

今回のモードセンターさんの展示を拝見し、VMDXの可能性と、VMD稼業の変わらぬ重要性を再認識させられた次第です。ホント、まだまだ色々なことができそうです。

 

勉強になりました。モードセンターさん、お招き頂きありがとうございました!