· 

七彩新作発表展示会

 

毎年この時期恒例、青山スパイラルでの七彩さんの新作発表展示会にお邪魔いたしました。

とても良い展示会でした。

 

 

今回は、豊富なマネキンバリエーション、しかも地に足の着いた堅実なプロダクトを、気張りすぎず遊びすぎず煙にまくことなくプレゼンテーションされています。ここ数年、マネキン業界においてはマネキンの展示よりもリース什器の展示や設備器具に展示面積を割く傾向が続いていますが、この展示ではあくまでもマネキンが主体で、什器も豊富にラインナップされているものの、「VPの後ろに控えるIP」や「VP器具」としての「使い勝手」を非常にわきまえた展示になっています。私はマネキンマニアですので、マネキンを軸にメーカーの開発特性や特徴が垣間見えるこのような展示への回帰は大変喜ばしく感じます。

ボナベリ、ストックマン、ウルフといった国内代理店となっている舶来ラインナップは展示を最小限に抑え、オリジナルで頑張ってるぞ!というのがよく伝わります。

 

私の独断と偏見に満ちた印象の中では、七彩さんの持ち味は

  • 人体を素直にトレースしたシンプルでベーシックな製品
  • トレンドのデザイン性向に左右されない堅実な製品

といった捉え方になっています。

これはマネキン(リアル・抽象)、ボディなどを問わず共通です。

派手さはないが確実性が高いという感じです。

 

「change in thinking!」という企業の姿勢にのっとり、既成概念にとらわれず、これまでにない発想で商品開発を進められているとのこと。知識や経験よりも新たな試みに挑戦する企業の姿勢だそうです。

 

私には、これまでに七彩さんが積み上げた知識や経験をキチンとベースにして、今後の業界に必要であろう方向性を新たな試みとして提案されているように思えました。既成概念ではあったものが、いよいよもって取り組まねばならなくなった・・という現実を直視して、ものづくりに積極的にアプローチされているように思えます。

 

 

がんばりすぎずしなやかなスポーツマネキン。

飲みながら、見ながら、歩きながらのながらマネキン。

抽象マネキンの更なる充実。

これらはどのメーカーさんも取り組んでいることです。

特徴をもった製品を創り出すのは大変なことでしょう。そんな中でスポーツマネキンは日本の市場にもフィットする共感性とスタイル、カジュアルで健康的な美しさを醸し出していると感じます。VPステージもなかなか場のムードを引き立てるデザインで、セットで使いたいな!と思わせる説得力があります。

 

親子孫三世代のマネキンラインナップ。

今や百貨店より大型スーパーの方がVPが上手い時代。地域密着でリアルなライフスタイル提案をわかりやすく行うのに、スーパーではこのような親子孫VPの提案はもってこいでしょう。案外売れているんだそうです。ティーンエイジャーのマネキンも充実していましたが、抜け落ちている穴がひとつ埋まった感じです。売れないものは作らないとは言っていられなくなったのでしょうが、需要はあると思います。

 

若手原型師が創ったというコミカルなマネキンも目を引きますね。

「描き靴」という言葉を教えて頂きました。靴を描くという手があるのか!

 

シンプルで上質なボディラインナップ。

マネキンは手間がかかるし場所も取る。お金もかかる。ということで、ここ数年、機能的で手間もかからない抽象マネキンが市場を席捲してきましたが、そこからさらに進んでボディが増えていくのではないかと思われます。マネキンをたくさん使いすぎているんじゃないのか・・・という側面もあるんですけどね。

 

 

エコボディ。

自然下では分解しないFRPを用いるマネキンは環境破壊を引き起こすものと言えます。業界としては、今後土にかえるエコな素材のマネキンを開発してFRPと置き換えていくことが企業姿勢としてますます必要となってくるでしょう。

これまでも、ヤマトマネキンさんを筆頭にエコプロダクトの取組みは積極的に行われていますが、今回のエコボディはボディとしての完成度も、製品としての堅牢性も、生産段階での損耗率の低さも、そして塗料までエコ素材であるという点からも評価されるべき製品であると言えます。まだ少々コストがかかるとのことですが、催事場などで大量に用いられるものなどはエコマネキンに切り替えていく努力が必要でしょう。

 

そして、リアルマネキン。

今回、新作の素晴らしいリアルマネキンが2体ありました。

造形もメイク・彩色も、ヘアメイク(なんと衣装と一体化!)も素晴らしいの一言!やはりリアルマネキンは魅力的です。場の張り方と磁力の強さが群を抜いています。今展示の主役を張ってしかるべきものとすら思えます。

 

日本では、欧米人種型のリアルマネキンをそのまま用いることができる時代は終わったと言えます。VPにおけるファッション表現も変わってきましたし、場を張るだけの大きなVPの場も、大きなショーウィンドウも、運用する予算も今の日本の企業にはなかなかないからです。それに、品揃えや商品のテイストやスタイルが多様化しましたから「どうよ!」というマネキンがはまらない場合が多いのです。

でも、欧米では相変わらずリアルマネキンを素敵に大胆に活用しているんですよ。なんで日本ではできないのでしょう。テーマと商品によっては、まだまだリアルマネキンで切替を行う設定もあり得ると思うんですが…

      

日本の市場で、日本の小売店舗で、日本人の感性にフィットするリアルマネキンってもっと考えられないでしょうか。カワイイものはたくさん出ています。それらは大きな場を堂々と張れるものではなかなかありません。日本らしい、カッコいいリアルマネキンを見てみたい!

そして日本のVMDに再びリアルマネキンを復権させたい!

と強く思った展示会でした。