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VMDを誰から教わったか

 

現場でVMD担当の皆さん、売場店頭の販売員の皆さんと一緒にVMDを作っていくのは本当に楽しいです。所謂OJTというやつですね。昨日の現場をもって本年の店頭業務は終了しましたが、コロナ禍の厳しい環境下で生きた店頭現場でお仕事と情報収集が出来たことを本当に嬉しく思います。

 

 

OJTですと、すでに実施された展開(VP・PP・IP)があり、それに対し実施者からテーマや展開商品の内容・売れ方といったマーチャンダイジング上の特徴をヒヤリングしたうえで、お客様の視覚に訴えテーマを増幅させるような構成に「美観陳列」していく・・というのが私のやり方です。

 

テーマなどが見い出せていないことや、陳列上の切り口や纏め方が判らないまま展開されている場合も多いので、目の前の展開(A案)を見た瞬間に別のB案・C案としてのテーマバリエーションや構成の仕方をその場でご提案するようにしています。

 

そして、皆さんのご意見を踏まえて「じゃあやってみましょうか!」となるわけですね。

 

時間がなければ私が解説しながらバーっとやってしまうことが多いですが、最近は極力売場の方やVMD推進担当者に手を動かして頂いて構成してもらうようにしています。いきなりやってみて・・と言われると緊張してなかなか手が動きませんし、迷いばかり生じるものです。でもそれでいいんですよね。VMDは正解がありませんので。

 

やってみて頂いて、美観陳列と構成の観点から私が最後にチョイと手直し・仕上げをしてみる・・というのが良いですね。


OJTをすると大抵の場合、OJTの相手方やその売場の方々がうわ~!すごく変わった!素敵!という感嘆をあげ、時には手を叩いて喜んでくださいます。お客様にもそう感じて頂きたいですね!


皆さんが自分でやってみて自らの手でそういう並べ方が出来るようになろう!というのを目標にして取り組んでいますが、継続していると目に見えて成果が出てくるものです。

 

美観陳列と言っても、その前提はマーチャンダイジングの意思が伝わるか、商品ラインナップが判りやすいか、買いやすいか・・に対しては留意が必要です。

 

 

見やすく買いやすい・・は前提にしていても、視覚的に目を惹くことをやっているので、実施しているとお客様が近寄ってきますし、実施後に主役MDが即売れてしまったり・・といったこともよくあります。

 

先日も手を入れガラっとテーマを変えた直後からMDがとても動くようになり、目に見えて売上が上がったと販売員の方から御礼を言われました。VMD稼業の冥利につきますが、この積み重ねで売場のファンが地道についていくものと思っていますし、テーマ性やビジュアル性を上げるためにコーディネイトしたアイテム、スタイリングがセットで売れることも多いので、売上につなげることも含めて「新鮮に見た目を変えていく」ことや「スタイルを提案する」ことを楽しく継続して頂きたいと思っています。

 

 

昨日、一日一緒にOJTを取り組んだVMD推進担当者さんと話をしていました。即興で展開OJTを出来るようになるには、とにかく場数だと。とにかくあちこちで手を動かしてみて、いろんなアイテムで構成を様々試してみるのが一番。そして、マニュアルにある模式図を目の前の陳列を使って再現してみることだと。自分もとにかくそれを繰り返して手が動くようになったんだよ・・それがいつかパターン化するよ、と。

 

私はそんな話をしたのですが、ふと思いました。自分は誰からこういうことを教わったのかしら・・と。。

 

 

これまで考えたことがありませんでしたが、私は店頭現場で、具体的に先生の手本を見ながら手を動かしたり、具体的に指導してもらったことは全くありません。上司からも同僚からも。デコレータさんの仕事を見て盗んだりはしていましたが、見て盗んだつもりでもデコレータさんの手業まではそうそうマネできるものではありませんでした。

 

私の先生、手本は「マニュアル」だったんです・・・


 

前の会社にはMDP(MP)のマニュアルがあって、やるべきことが原理原則として模式図で解説されていました。色の並べ方とか、ネガティブスペースとか、リピート構成とか、そういうやつ。模式図ですから、実際にはその通りになっていることは殆どないし、ムリもあります。絵も古臭いから、最近は敬遠されてしまう内容。その他、展開分類の考え方、通路や高さの考え方、場の役割といったストアプランに不可欠な知識も含まれます。

 

私はVMDの仕事についたとき、最初に任された実務が「社内報へのMDPマニュアル解説の連載」だったんです。素人なのにいきなりですよ(笑) それで、実際にはなんにも知らないんだけど、模式図の意味とか理論的な内容を一生懸命理解しようとして、解説文を書いたり、模式図を体現するような展開を探して写真を集めたりしました。自分なりに原稿を書いて、上司に見てもらい、アドバイスをもらって部長に見てもらう。それらアドバイスも通して、この連載は本当に良い勉強になりました。こんな重要な仕事をずぶの素人の私に与えて任せて下さった上司に今でも感謝しています。

 

私の先生はマニュアルだった・・・

 

私はこの世界に理屈と模式図から入った・・・

 

でも、その内容は決して机上の空論ではなかった訳です。現にマニュアルに書かれていたことを実践して今の仕事をしているわけですからね。

 

先輩や上司からは直接展開指導の手ほどきを頂いたことはありませんが、過去に諸先輩が担当された店舗や売場のオープン時写真を観察すればするほど、マニュアルの模式図やその理論を反映したものになっていることが判りました。店頭で習ったことも。それが興味深くて過去の写真資料を全てほじくり返してじっくり研究しました。そんなことをしているうちに、自然と美観とか構成力が理解できるようになったんでしょうね。頭と手の両方で。

 

先輩方からは直接教えてもらえなかったけど、先輩方が作ったマニュアルから教えてもらった。先輩方が作ったマニュアルは凄かった!!

それがあったから私も社報の連載を全うし、その内容を深く理解することができたんですね。

 

その知識をもとに、実際の現場やストアプランを通して実践と実験と実学を重ねてきたということのようです。

 

店頭OJTはあらゆるMDでそれこそ数えきれないくらいやってきましたが、一緒にやってきた同僚の皆さんも同様のスキルとマニュアル内容の深い理解を持っていて、同じことを理解しているので実にスムーズに共同作業が出来ました。これもとても良い経験でした。

 

 

シンプルで解りやすいマニュアルって大事。

 

それって案外、昔も今も変わらない。基本のキなので。

崩すのも、応用するのも基本を理解してからの方が良い。

基本のキって、実はデザイナーの構成力ともシンクロしています。美観を成す理論だから。

 

この、古来からマニュアルに出ているような内容、今の現場では本当に過去のものとなっています。埋まってしまってもはや誰も知りませんし、埃っぽいものに見えます。でも磨けば光るお宝なんですよね。勿論業態やMDの専門性によってマニュアルの内容や表現、細さ等は変わってきますが、基本は同じであると思います。

 

一方で、これだけではダメでして、やっぱり決め手は「テーマ」「編集の切り口」「キーアイテム」といった感じて頂きたい提案要素なんですよね!VPだろうがIPだろうが。これを考える力が落ちてきています。これを考えるにはマーチャンダイジング計画として理解し、顧客を設定して導くことが重要ですし、本部は各店舗や売場にこれをキチンと通達してあげてほしいですね。

 

テーマを語るストーリーテラーとなるVMDを目指したいものです。

 

クリスマス展開や次にやってくる春の切替などは、まさにストーリーテリングの恰好の練習となります。コロナ疲れで消費意欲も減退しきっている今こそ、ストーリーテリングとビジュアルイメージで購買意欲を喚起し、ワクワクしてお買物したくなる店頭を作っていきたいですね!

 

あ、ECもおんなじですよ!

ECもVMDXで!!