· 

今年の秋の立上りは

 

連日猛暑が続いてますね。

 

この数日で日もどんどん短くなり夕方になれば大分風も涼しくなってきたし、夜になればウォーキングに出てもちょうどいい感じになってきてホッとしています。でも本日(9/4)は台風の影響もあるかもしれませんが、また35度超え・・・まあ暑い暑い。。。

 

ふと空を見上げると秋らしい雲が出ていたりしますが、先日夕方に目を奪われたかなとこ雲は積乱雲が姿を変えたもので、幹の部分は豪雨だそう。夏と秋の境界にいるのかな・・と感じることができます。

 

女子アナの皆さんの装いは秋らしくなってきたけど、街のサラリーマンは相変わらず半袖ワイシャツ・ノータイ・ジャケット無し。そりゃ暑いもの。秋と夏の境界・・・

 

暑いけど、確実に秋を感じられるようになってきました。

 

店頭も先週からフォールシーズンに本格突入。

けど、いつもと違う。

衣料も雑貨も、新商品の入荷がどこも遅れています。秋物の新作がないところも。コロナの影響で受注分の生産が追い付いていなかったり、そもそも作られていなかったり。今ある店頭在庫がどんどん抜けていくという事態も見られます。

夏のクリアランス後の8月上旬からプレフォールを立ち上げる店は特に、新商品ない、あってもまだまだ暑さ本番、といった中で秋らしい色や素材が打ち出しにくいというダブルで悩ましい状態だったでしょう。

 

8月頭から秋物の新商品が入ってきていたブランドもありますが、秋物というより秋色夏素材での晩夏向けのものが多く、これは当然の動き。

今秋物は、それに加えて前期ものや春物の再投入も多いようですし、今秋生産分を来年に廻す動きもあります。同じブランドでも店舗により入荷状況は異なるようです。

 

いつもなら、秋物体制のスタートは春同様に店頭が新鮮味をもって切り替わる絶好の機会となりますが、今コロナ下においてはなかなか楽にはいきません。売上減となり装飾費もないから、秋の装飾モチーフも例年よりおとなしくなっていると感じます。

 

私がお仕事させて頂いているお店では、正規の秋物と秋色夏素材ものを中心にNEWを打ち出せる場所はキチンとVP拠点化し、新鮮な店頭にするためにいつものようにテーマカラーもしっかり打ち出していこう!という方針を出しました。この秋冬はいつもよりSALEも多いだろうし新商品もバラツキがでるけと、うまく棲み分けて展開していくしかありません。

 

コロナの影響で顕在化したのは業績低下や在庫の問題だけではなく、この10年来の新商品の高速回転化&作りすぎ問題や、ずっと言われてきたシーズン区分の問題(気候変動による暑い時期の長期化)もワンセットになって、今後のマーチャンダイジングのありかたを業界に突きつけていることを実感します。


実際、従来のシーズン区分に沿う形で秋が立ち上がりましたが、8月末でまだ35度超えの暑さが続いています。リスク管理と利益確保の観点から在庫と消化をより慎重に捉え読まざるを得ないので、プレフォールを設定している店だとそれ自体の必要性を考えるでしょうし、気温的には晩夏が延びて秋の立上りも週単位で後ろ倒しといったことを検討するところも出てくるでしょう。秋はどんどん短くなっちゃう。

 

シーズン区分の切り方はおっきくは業界ぐるみで一蓮托生の構造だから、簡単には変わらないというのが大筋の見方。区分回数を減らせば投入デザイン数が減るからメーカーは困るだろうし、小売は切替のメリハリが薄まって店頭の新鮮味が薄れるし、回転も売上も落ちるかも。でも、四季がある日本の小売店頭では気温が最も重要なファクターですので、気候変動対応も含め営業戦略やマーチャンダイジングの構造、気温マーチャンダイジングのタイミングを考えるキッカケが外部環境与件として否応なしに与えられたという風に感じられます。これから各社それぞれの考えでシーズン区分設定の幅がさらに多様になっていくのでしょう。

 

気候変動があっても日本には四季があるのは変わらないので気温MDは存在し続けるし、歳時記や行事に基づくオケージョンも存在し続けます。だからシーズンMDの新商品としての打ち出しも変わらず重要だし、企業や店舗により多少差が出ることはあるかもしれませんがデザイン、素材、カラーのトレンド打ち出しの重要性も変わらず重要でしょう。リアルだろうがECだろうが。VMDにとってはなおさらです。

  

 

この秋の立ち上がりは、撤退ブランドも多いし拠点化できる場所が限られてなかなか面にならなそうですが、VMDとしてはキチンとカラー表現とコーディネートを行って、打ち出せるセールスポイントをPOPで具体的積極的に表現しようとしています。急遽グランドフロアに作ったVPも、コーディネイトがお客様の目を惹いて売上につながったとのこと!やはりVMDはインタラクティブなコミュニケーションツールですね!

 

まだまだ暑いから秋ものは視覚的にも気持ち的にもピンとこないけど、暑いながらも着実に季節は秋に入ってきているのも実感するし、実感できるから店頭の秋の切替わり感と新鮮さは依然良いものです。プレフォール扱いで8月中頃に拠点化したVPでは、あまり暑苦しく見えないように白を多めに上手く混ぜてもらいましたが、VMD実務者としては、これからも変わらず視覚的表現としてのシーズン提案とカラーコーディネイトを大事にしていきたいと考えています。

 

まだまだ暑いけど、この色合いやビジュアルイメージを目の当たりにするとハッとさせられます!
まだまだ暑いけど、この色合いやビジュアルイメージを目の当たりにするとハッとさせられます!

 

VMD顧問をさせて頂いているこのお店では、この秋の立上りに際して各階VMD推進リーダーたちがVP拠点のコーディネイトを持ち寄り、他フロアの商品にも見て触れて、全館でのテーマコーディネイト、点と店をつなげて面にするという観点を積極的に学んでいます。このような大事な積み上げを若いリーダーが率先して行ってくれることが大事ですね!

 

そして、皆そのミーティングを楽しんでいます。見ている私も楽しい!

これがVMDの良いところ!!楽しくなってくるから、皆さん自分でどんどんやってくれるようになります。

 

結果、秋らしい拠点が各所に出来て点と点がつながり、メリハリの効いた秋らしい面展開に見えてくれました。

 

書籍売場では「紫色の本」をセレクトしてコーナー展開することに!
書籍売場では「紫色の本」をセレクトしてコーナー展開することに!
食品売場は、リビング売場のコーディネイトのためにワインや調味料などを積極的に貸し出してくれます!
食品売場は、リビング売場のコーディネイトのためにワインや調味料などを積極的に貸し出してくれます!

 

ところで、米国、英国両ファッション協議会は、作りすぎ問題の改善や、より気温変化に対応した投入時期のジャストシーズン化のためコレクション回数の見直しを提言しているようですが、これは商品販売スケジュールとしてのシーズン区分調整の問題だけでなく、サスティナブル社会への貢献の観点でもあります。いま、企業の存在意義は利益最大化だけでなく社会貢献も同時に問われる時代になりましたからね・・・

 

私の授業を受けてくれた生徒たちも、これまでの商慣習やマーチャンダイジングに囚われることなく、当たり前の価値観としてサスティナビリティや社会貢献を意識している人、自分のやり方考え方で柔軟かつ独立性をもった事業を構想する人が本当に多く、頼もしい限りです。リアルとかECとか言った垣根の感覚自体をあまり持っていない世代。自分のやりたいこととマーチャンダイジングに合わせてリアルもECも自由自在に選び、使いこなし、しゃっちょこばらずに融合させていく人たちだな、と感じます。

 

コロナ下においては、従来のリアル店頭中心のままでは需給も収支も折り合わないし、デジタルトランスフォーメーションという標語を使うまでもなくリアルとECのシームレスな購買環境を提供し集客できないとキビシイですが、これから社会人になる世代はなんの抵抗感も躊躇もなく、当たり前のこととしてこういう構造転換を自然に進めていくのでしょう。

 

VMDはリアルと同時にECにも対応可能な理論ですが、ECにおけるVMD思考(VMDX)のマインドと場の構築、それによる視覚的提案力の向上とサイトのキャラクター化が重要であろうと考えています。VMDXは私の造語ですが(笑)、今後重要になるテーマと勝手に予想して、今後は授業の中でもシーズン区分に関する話題と併せてVMDXというものにも追ってみたいと目論んでいます。オチで話が変わってしまいました。。