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VMDと環境整美

 

私は年に3回くらいしか髪を切りに行きません。ロン毛ではありませんが、前髪やサイドがそこそこ長くなって流れるのは大好きです。子供の頃から髪の色が茶色っぽいのもあって、50過ぎた今でも結構気に入ってます。

 

ところが、前髪やサイドよりも襟足やもみ上げの髪が伸びるのが早い!年々早くなっている気すら(笑) 襟足は自分では切れないけどもみ上げは切れるので、そこだけ伸びると手入れをし、後は出来るだけ伸びるのを楽しむ。ある日突然「もう重くてダメだ!」となるので、週末に美容院に予約を入れてバッサリ切ります。カットのメリハリが毎度あるので、カット翌日に出勤すると会う人会う人「うおお。切りましたね!」「カッツカッツ✂」とか言われたものですし、今でも言われます。

 

そんなことはさておき。

 

私はこの15年くらい、ある大手美容院さんのお店にお世話になってます。わが家4人全員そのお店にお世話になってて、担当者は全員違います。私は当初店長クラスの女性のスタイリストさんでしたがお辞めになってしまい、その後担当になって頂いたのが現店長さんです。

 

この店長さんが、まあイケメンなことよ・・・でして、背高く細身で足長くスタイルよし、シンプルだけどキレイ目ですごくオシャレなファッション、物腰柔らかなトーンと所作、控えめなお喋り、さりげなくも実に爽やか・・・と、男にまったく興味ない私もかなりファンなわけです。カットしてる時の動きもカッコイイすね。

 

この店長さん、これまではトップスタイリストという肩書の、それでもかなりトップクラスの方でしたが、この度めでたく、さらに上のトップ中のトップ、クリエイティブスタイリストに昇格されたとのこと!本当におめでとうございます!

 

もしかしてご栄転で他のお店とか本社とかに行かれるのですか!?と聞いたら、いやいやここにいますよ!とにかく実力実績だけが評価の世界なのでここで頑張りますとのことでした。カッコいい。よかった。

 

指名料はちょっと上がるのですが、こういう方にカットしてもらうって大事よね!!と妻も言ってくれますので、今後もよろしくお願いします!客の殆どが若い女性のお店に53のオッサンが行くのはなかなかビミョーなんですが、まだまだ通いますよ。

 

ここまでは前振り。

 

このお店はかなり大型でスタイリッシュ。改装してから随分経ちますが、改装前も改装後も、まったく変わりなく徹底されいることがあります。

 

「環境整美」です。

 

言葉は環境美化でもいいです。とにかく、どこを見ても綺麗に整理整頓が行き届いていて、余計なモノは置かれていません。余計というのは、店舗環境においてテイストやデザイン上の邪魔になる「ノイズ」がないことです。事務的な備品や配線などの臓物系はもとより、デザイン・テイストに合わないものが一切ない。

当然ながらゴミの類はまったくない。

 

そして、美化された環境内で店頭に置かれているモノはアイテム別・サイズ別・カラー別にすべて美しく並べられていて、カラー剤や美容器具、それらを収納するワゴン、雑誌やプロップスなど、すべてのものに意図をもって徹底されています。

 

昔撮った写真はカッコいいな・・

 

このサウンドイコライザーのようなカラー剤のストック!
このサウンドイコライザーのようなカラー剤のストック!
待ち席のキャンディもストアイメージにピッタリ!
待ち席のキャンディもストアイメージにピッタリ!

 

 

環境整美が行き届いてノイズがなく、モノが美しく並べられた場所は、そのさまがVMDに見えますしVMDになります。小売店じゃなくてもです。カラー剤がワゴンに入っているさまがVMDなんです。これらが集まって、視覚的に統合されてお店のイメージを創り出しています。

 

これが昔からずー--っと一貫して変わらないんですよ。人はどんどん入れ替わってるはずなのに。VMD担当とかいるのかな・・・ 

 

中央の背合わせシャンプーシンクの棚にはシーズンの植栽・フラワーアレンジが。シンクにはタオルやシャンプーが美しく並ぶ。
中央の背合わせシャンプーシンクの棚にはシーズンの植栽・フラワーアレンジが。シンクにはタオルやシャンプーが美しく並ぶ。
こういう様子を見つけては一人マスクの下でニヤニヤ。
こういう様子を見つけては一人マスクの下でニヤニヤ。

 

こういう話を店長さんにしたことも、聞いてみたこともこれまで一度もありませんでしたが、良い機会なので聞いてみました。

 

「このお店、カラー剤とか器具とか、洗濯機やレジカウンター周りとか、モノの並べ方が美しくていつも徹底されてるじゃないですか。これって、店長さんがそういう指示を出しているんですか?」

 

「いや~、ボクは特にそういう指示は出してないですね。ルールとか、誰かがやれって言ってるわけでもなくて、昔からそういう習慣なんですかね。このお店自体はデザイナーさんが設計したので、鏡とか、鏡の下の棚板とかも、全部デザインされてます。そういうこともあるでしょうか。」

 

VMDという言葉はあえて使わなかったのですが、環境デザインからくる制御と共にお店の習慣、全員の習慣であることが判りました。おそらくオペレーションとして自然に、自動的に整理できるようになっているのでしょう。用剤、道具や備品、設備や什器デザインなどすべてにおいて。まさに美の業界の美の文化ですね~!!

 

それらにスタイリストの皆さんとお客様が、ファッションやヘアスタイルも含め、統合的なスタイリングとしてバッチリはまっている。私を除いて(笑)

 

社内的にはVMDという言葉もマニュアルもあるんだと思いますが、そこまでガチガチに捉えていないところがまたすごい。誰かが指示を出さなくても、ルールとして明文化してなくても徹底して維持継続されているのは本当にすごいことです。草の根の心がけですね。

 

最近、食品関連のお仕事が多いのですが、美容院同様に食品関連も店頭の環境整美って重要。美容院同様、衛生面の安心安全と一体化しイメージされる美環境がホント大事ですね。

 

市場や路面の個人商店などを除き、VMDを標榜する食品系のお店の場合、VMDの殆どは環境整美に影響される・・・と言っても過言ではありません。ポイントは余計なモノを置かない、テイストの合わないモノを置かない「ノイズカット」と、モノを美しく置くこと(美しいには色々な解釈があります)にあると考えています。クリンリネスはそこまで含めてのものですね。

 

年に3回の美容院の環境整美定点観測は今後もずーと続けます。そしてこれからも一人ただただ感心することでしょう。鏡越しに、備品やカラー剤が綺麗に並べられたワゴンを見ながら感心する。いつの日か店長さんが変わっても維持されると良いですね。