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ハンドメイド作家さんのPOPUP

 

数週間前の話。

 

月に3回ほどお世話になっているお店で朝イチに店内を巡回しておりましたら、グランドフロアのハンドバッグゾーン一等地で目立つ看板を発見。いつもなら早足で通り過ぎちゃうところ、看板に目を取られて近寄る。

 

 

「ハンドメイドショップ」という謎のタイトル。

ハンドメイドで作ったお店のことか!?

 

否(笑)

地元の専門学校生がハンドメイドで作った雑貨・アクセサリーを作家さん自ら店頭で販売するPOPUPのようです。

 

そのままショップフロントのテーブルに吸い寄せられると、そこにギュッと広がる可愛い世界!

 

マクラメのバッグ、チャーム、タペストリー。アロマストーン、シルバーや七宝のアクセサリー。夏らしい爽やかなトーン。

 

しげしげと見ていると、販売スタッフの女性が声をかけてくれました。

私は胸にネームバッジを付けているので社員さんと思ったようです。

 

 

「これ、ディスプレイはどうでしょうか?」

 

!!

偶然にしては出来すぎるお声掛けに驚きましたが(笑)

 

私も思わず即反応・・・

実はディスプレイとかの指導をやっている者です!なんつって・・・名刺出して。

 

 

もう、今のその時点ですごくテイストと世界観が出ていて良いのです。

 

作家さんの直売だから、ディスプレイや陳列も作家さんがいちばん良いと思うことをするのが良いと思いますよ!とか言いつつ、一応その道の専門家としてはそれらしいこともコメントする方が良いよね!ということで、いくつかアドバイスをさせて頂きました。

 

後ろにハンガーラックは置かない方がいいですか??

 

いやいや絶対置いて高さを出した方がいいですよ!!

 

このテーブルは低くて目に留まりにくいから、歩いているお客様の目と足を留めるためにこのハンガーラックの中央に目立つ商品を出すと良いですね!色でいうとこのあたりが目立ちそうですね!いい具合にテーブルの中央にも親玉級のアイテム(バッグ)が置いてあるから、これを中心に差し色を合わせつつディスプレイを三角形に構成してみよう!そうすると低いテーブルと高いハンガーラックが縦に繋がってインパクトが出ますよね!みたいな感じでお話しつつ、実際に商品を動かしてみたりして。

 

テーブル上が白(雑貨)と黒(アクセサリー)で色分けされているので元々メリハリとリズム感は出ていたところに色映えが変わって商品が目立つようになったり、展開により動きがついたので喜んで頂けたようです。

後ろも横も背の高い什器で他の商品が取り囲んでいるから、メリハリつけないと埋もれてしまって見えません。

 


 

喜んで頂けたのには訳がありました。

 

もともと、目立つ色のキャッチ―なイチオシアイテムを目線の高さにディスプレイしていたところ、立ち寄られたご年配のお客様に「今の時期これは暑苦しいわよ」と言われてしまい、下げたと。

 

そういうご意見もあり、お客様の反応を見ながらディスプレイや陳列のことが色々気になって色々変えてみてるそうです。素晴らしいですね。

 

シーズン性を出したり合わせるのは大事だけど、すべてがシーズン性を出している商品というわけでもないし、色は数あるカラバリの一つ。全然問題ないですよ。正しいことをされていたんです。

 

たしかにご年配のお客様が多い場所だけど、ターゲット顧客、イメージしている顧客はそういう方ではないのだから、ターゲット顧客の好きそうなものを出すのが一番良いですよね!

 

で、それをいい場所に出した方が、POPUPの展開としてはあきらかにタッチポイントとしての発信度やブランドの個性がマシマシになりました。

 


 

夕方になって時間ができたので、お店のVMD担当者と一緒にもう一度行きました。

 

すると、色やサイズなどの配置バランスをいろいろ変えてみたようで、よりインパクトが出ておりPOPUPらしい個性が展開全体から発散されていました。

 

そして、目線の当たりにディスプレイした商品が売れたと!

 

リアル店舗に出店して販売するの初めてだし、お客様がなかなか来ないし、なかなか売れないのでくじけそうになっていたそう。

もう、3人で大喜び。

 

私が帰る際にPOPUPの横を通ったところ、お客様が3、4人溜まっていましたし、その後もまた売れたとのことです。

 


 

今回POPUPを出店してみて、リアル店舗で商売をしてみて、すごく刺激的だったそうです。

 

動いている人間の眼を留めることの難しさや限られたスペースに商品を並べることの難しさ。

 

そして、自分以外のブランドや商品に周囲にを囲まれている環境下で自分の商品を埋もれさせないようにすることの難しさ。

 

リアルな接客やセールストークが発生するし、反応も様々。

 

メインはECだけど、ぜひまたリアル店舗でPOPUPする機会を作って頂きたいものです。

 


 

ところで、マクラメ糸は専門業者から仕入れたフェアトレードによるオーガニックコットンを使い、サスティナブルなモノづくりをしているそう。そういうことはサイトで積極的に謳っているのか聞くと全然謳っていないとのこと。今やサスティナブルなモノづくりは当たり前の前提過ぎてみんなやっていることなので、それを打ち出しても埋もれるだけなんですって。

大企業はこぞってサスティナブルやSDGsを謳うわけだけど、サスティナブルネイティブな世代はそれを積極的に謳い打ち出すこと自体がカッコよくないとの意識だそうです。これは、最近他の人からも聞きました。でも、聞かれればちゃんとやっていることを、具体的取組として説明できる。実にスマートですよね。

 


 

今回のPOPUPは、店舗が商工会議所と連携して地域活性化と販路開拓支援のために行っている期間限定の「場所貸し」に出店応募頂いた事例です。今回ご紹介したような既存売場の一角もあれば、退店したテナントの跡地をまるまる使わせてもらえるパターンもあります。賃料は売上の10%。

売上額が少なければ格安出店できますが、人件費もありますから儲けはなかなか出ないかもしれません。

 

でも、今回のようにリアル店舗での出店経験のない作家ブランドや若手デザイナー、EC専業メーカーさんなどが実店舗での世界観表現や販売を試したりするのにはとても良いと思いますし、出店頂く店舗側にとっては、お店に新規顧客に来てもらえる千載一遇の機会を得ることになります。特に若い世代の「次世代顧客」を一人でも多く掴むのが極めて大事なので、こういう出店をキッカケに少しづつMDを若返らせたり、イメージチェンジをしていくことも可能ではないかと思えてなりません。

 

そして、Z世代の商売のしかたや顧客へのアプローチ法を一つでも多く情報収集させて頂き、学んで事業に活かさないともったいないですね。

 

作家さんが出店・直販するイベントやPOPUPは集客力も話題性も高いのでたくさん催されていますが、創業して間もなくの出店というのはなかなかハードルが高いし、ある程度の知名度も必要。いずれそういう場への出店を狙って行かれるでしょうが、まだ認知度も低い中イベント出店でなく単独でリアル店舗のPOPUPに挑むというのはなかなかのチャレンジです。その意気込みに感動しました。

 


今回ご紹介したブランド

 

Lumore_story (ルモアストーリー)さん

 

作品が誰からも愛されますように。

お客様のもとでお客様と一緒に物語が創られていきますように。

という思いと意味をブランド名にこめているとのことです。

そういうモノ作りの姿勢。理念。

今後の展開、楽しみにしてます!

 

ご紹介したPOPUP販売は既に終了しています