こちらでは、VP・PP・IPといった「場の役割」、

VMDを実践する上で重要なストアプランに係る要件「売場の眺め」「高さと奥行」といった

MDPに関係する事項をトピックとして解説しています。

売場の眺め

「売場の眺め」を平面図作成の段階から頭に立体的に描いて想像を存分に膨らませ、具体化します。
「売場の眺め」を平面図作成の段階から頭に立体的に描いて想像を存分に膨らませ、具体化します。

 

「店舗(売場)の使い勝手」の中を考える際に「場の役割(VP・PP)」と「売場の眺め」を勘案しておくことは、買う気にさせる空間上の工夫を早い段階から行う観点で大変重要です。お客様に店舗内や売場内の隅々までの回遊を促がし商品に触れる機会を増やすことを目的にすると、フロアや売場の中に「つかまえどころ」を上手く設けるのが得策です。お客様はうまくつかまえないと、流れるプールのようにスルーっと通り過ぎてしまうからです。回遊導線の中でお客様の目を留め、足を留めることが入店と売上の機会を得る第一歩ですし、それを店舗内・フロア内・売場内の隅々まで、点と点をつなげて面にするのが理想です。

 

「お客様が回遊導線(または外)から売場を一瞥して眺めたときの売場の見え方」を建物構造与件から逞しく想像し、遠目からでも「売場の手前から奥まで可能な限り要所要所が見えるようにする」ことで目の留めどころを増やし、目の留めどころとなる場所に効率よく場の役割や品揃えのコア、環境的な特徴となるものを配置する・・そしてお客様をつかまえる・・・という考え方が本項「売場の眺め」の内容です。

 

「つかまえどころ」と「見通し」の二つの観点から解説します。


売場の「つかまえどころ」を創る

導線の中で、お客様の導入はどこからが一番強いか?を常に考えるようにします。
導線の中で、お客様の導入はどこからが一番強いか?を常に考えるようにします。

 

①「つかまえどころ」を作る。

 

常套手段としては、主導線沿いに対しタッチポイントの連打を行うことです。タッチポイントでお客様の目を留め足を留め、フックにかけてしまうのです。そういうハッピートラップを仕掛けるのもVMDの重要な役割です。

  • 売場の顔としてのVP、品揃えの顔としてのPPを要所要所リズミカルに配置する
  • わざと目が留まるような角を(地型として)通路上に出してお客様を物理的に引っ掛ける
  • お客様が引っ掛かりやすい形状の什器をわざと通路当たりに置いてお客様の「溜り」を作る
  • アッ!と思わせる装飾や意匠を凝らす
  • 人気商品のカタマリを作る
  • 陳列に大きな動きを付けて目を留める
  • サイネージやPOPで目を留める
  • インスタに載せたくなるようなフォトポイントを形成する

など、細かい手法も含め様々な手法があります。

お客様が主導線を歩きながら、目の前のタッチポイントの先にまた次のタッチポイントが見える・・この先の通路の突き当りでタッチポイントが手を振って呼んでいる・・という連携プレイを意識しましょう。フロアや売場の平面図を作る初期段階から拠点の連携プレーの様子がしっかりイメージされていることが望まれます。

 

売場の「見通し」を創る

②手前から奥まで見通しよく売場を作る。

 

前面のタッチポイントでお客様をつかまえました。そこには売場が控えています。そのときお客様に売場全体の品揃えの輪郭がよく伝わるように、売場の内部にお客様を引き込めるようにしたいものです。

  • 通路(主要な通路は極力奥までまっすぐとることで奥までよく見え、行きやすくなる)
  • 壁面・柱(遠目からでも目に留まるため高さを活かした展開面を構成する/特に通路から見える箇所)
  • Low to High(売場手前から奥に行くに従い徐々に什器の高さを上げていく/すべての展開が遠目で把握できる)
  • セットバック(売場のリースラインから少し什器配置を引っ込めることで印象を軽くし入りやすくする)
  • ルックイン/ルックアウト(エスカレータサイドや建物外から売場内の見え係り、その逆に配慮する)

 

上記とともに、

  • 売場前面:新しい提案を行う場所(タッチポイント)
  • 売場内部:お客様が商品を比較検討・選択し購買を決定する場所
  • 壁面・柱:売場の特徴と品揃えの輪郭を強く打ち出せる場所

という覚え方をするとよいでしょう。

これら場によって持つべき役割が、一瞥してお客様が捉えることができるのが理想であり、要所要所でVMDがより視覚に訴え魅力的に見えるよう援護射撃をするというわけです。

 

セオリーでは、置き什器の高さはH1350までとされます。これは人間工学的に人の目線の高さがH1500程度にあるとされるからです。ところが、H1350だと実際の品揃え高はH1100~1150止まりとなるため商品量を増やしたい向きには低いとされたり、また長尺商品が増えたことでHGもH1500アッパーが求められるようになっています。「この何年かで人間の平均身長は伸びてるんだから、什器の高さも上げろよ!」と声を張る方も少なからずおられます。まあたしかに・・・

 

メリハリやポイントを作りだす中ではこのような高い什器を置くのはアリだと考えますが、一方で見通しという観点では必ず裏が出ますので留意してください。人の行かない「裏通り」が生まれます。

逆張りで、ジャングルのように複雑な通路、見通しのなさ、混とんとした包まれ感を特徴とする店も多くありますが、それはそれで全体がタッチポイントとなっています。中に入ると、きちんとタッチポイントが連打されていたりしますから、それならそれでOKです。本項はあくまでセオリーとしての解説をしています。

 

通路計画についてはまた各論ありますが、少々VMDからは離れるためこちらはまた別の機会に。

 

売場前面のVMDはキャッチポイントでありタッチポイント
売場前面は新しい提案をする場であり、お客様をつかまえるキャッチポイントでありタッチポイント!!!

 売場の眺めを効果的に作り出しお客様にアピールする場とするわけですが、VP・PP・IP・プロモーションの如何を問わず、そのような場は販売計画上の「重要拠点」と位置付け、シーズンやオケージョンに合わせた年間展開計画上で意識して新鮮に切り替えて使っていくことが望まれます。新鮮に切り替えることで、お客様が来店されるたび新たな驚きと楽しさを感じていただけるからです。

 

キャンペーン・プロモーションの場としていつ何をどうやって打ち出すことにするか。そのストーリーテリングの場として、店舗・売場内のどの拠点を選び、どのようなVMDとするか。宣伝計画や装飾計画と一体感をもって連動し緻密に運営しましょう。 


 

 

最後に売場の眺めという観点で、VMD計画と切っても切れない下記をフォローしておきましょう。

  • 演出照明計画:つかまえどころをVMD拠点とするにはその場を輝かせるに十分な演出照明が必要。
  • 展開設備計画:メイン拠点では五感演出の助力となる展開設備(電源・音響・吊元等)が望まれます。
  • 意匠計画  :壁面・柱にPPやIPが設置できない場合、目を惹く環境意匠やヴィジュアル等を検討。
  • サイン計画 :大型店舗の場合、建物・フロアの中でパブリックサインや案内サインがどうつくのか、      VMD拠点設計がそれらを見え係り上阻害しないか、を検証しておきましょう。

 

「売場の眺め」を俯瞰してストアプランやVMDプランを計画進行することは、街並みづくりと似ています。「つかまえどころ」の話だけではなく、ファサード作りやパブリックスペースを計画する際にも必要なものの見方です。お客様のための街と景観を創り出すことであり、店舗側としては景観条例を創り出すことなのです。売場の担当者全員がこの観点を持つ必要はありませんが、VMDに実務として携わる方、経営トップの方にはぜひこの全体俯瞰の観点を持っていただきたいと考えます。

 

この感覚をつかむには、「離れて見る」ことを習慣づけるのがいちばん。売場から外にでて眺めましょう。フロアを回遊してみましょう。エスカレータから、外から見てみましょう。駅から、街から見てみましょう。きっと、自分の中で今までと売場の見え方が変わるはずです。

 

パリのユニクロのVMD
パリのユニクロ。昔の工場跡をリノベーション。売場の眺めが計算されつくされています。


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