巣鴨。
「おばあちゃんの原宿」と呼ばれて久しいですね。私もまったく訪れたことのない、というか、その気もなかった街です。でも、そんな巣鴨に行く機会が訪れました。
Up To Date なアトレや、商店街のある駅北口方面は外国人観光客も多く賑わっていますが、一方で南口方面は高級住宅地や旧くて佇まいの良いマンションが多く、六義園といった大きな公園があり旧き良き大人の街区と言う感じです。駅の周りは学校が多く学生もたくさんいますから、巣鴨自体をお年寄りだけの街と決めつける必要もないのかもしれませんね。
次女が毎週日曜に通っている塾が数か月前から巣鴨校になって、日曜の朝と夕に送り迎えをしているのです!週1回巣鴨に行ってます!
ところが朝は8時半に巣鴨なので、お年寄りの原宿こと巣鴨地蔵通商店街はシャッターが閉まっています。夕方のお迎え前に行く気にはあまりなりませんでした。そこまでの気分ではなかったのです。
たまたま昨日の日曜は朝の集合が10時半になりましたので、商店街のシャッターが開いてるであろうと!ついでに見ていくか!という気分になりました。もうひとつ、商店街の中で唯一のおもちゃ屋さんがあると判っていたので、クリスマス直前の「昔ながらの街のおもちゃ屋さん」を見たい!という理由もありました。
ということで日曜朝の地蔵通商店街を見て歩いたわけですが、予想を超えて、そこは商売の原点を見ることの出来る素晴らしい場所でした。
「VMD」なんて大仰なコトバを用いる必要はありません。温故知新です。商店はどうあるべきか。そんな見方でレポートいたします。
店舗の写真を並べてみましたがいかがでしょう。
カッコいいとか悪いとかいう話ではありませんよ!
- 店先で最大のアピールをしている
- 目を引こう目を引こうとしている
- 品揃えの全貌を見せようとしている
- 限られた小さい空間に多くを陳列し空間を使い切っている
- お客さんを捕まえるためのキャッチポイントを作っている
- イチオシを前面に出している
- 店内通路が明確に取られている
- 店主が前線に出て積極的にコミュニケーションをとっている
どの店も、こんな印象があるんです。
壁面を上まで使い切るだけでなく、吊るとか盛るとか・・限られた空間を使いきる工夫を一生懸命していて、とにかくオープンにアピールしていて、品揃えにテイストやカラーの統一感があって、目に映る楽しさ、ワクワクを感じてしまいます。これは年齢関係なく感じるのではないかと思います。店も、お客さんの反応を見て楽しみながらやってるな!と。オッサン一人でお店に入る勇気が出ませんでしたけど(笑)
これらって、商店の原点ですよね!
小さくても、専門店として地域のニーズを満たす商品を必要なとき、必要な量、仕入れてますよ!ほら、ありますよ!!お客さん、これどう?? 触ってってよ!という。シズル感があります。
こんなの当たり前でしょ!?って??
街の商店でここまでできているお店は減ってきていると思います。
昔、まだ巨大モールも家電量販店もファストファッションもネットショップもなかった、商店街華やかなりし頃はこうだったかもしれません。今や顧客の減少でオープンマインドよりクローズマインドになり、店主が高齢化で引きこもり、店先を閉じているお店が多いですよね。それに比べ、それだけ巣鴨のこの商店街が、その強い独自性をもって強敵の脅威もなく活性しているということでしょう。
巣鴨地蔵通商店街のお店の多くには、先に書いたような特徴があるのですが、特に洋品雑貨店を念頭にVMDの観点で書いてみますと、
- Low to High(前面⇒中島⇒壁面にいくに従い高くなる)
- 小さな店舗全体がVPであり、目を留めるのは空間上部のPP
- フロントにキャッチポイントがある
- 気持ちの上がるテーマカラーの設定(グレー×赤・紅・ピンク×差し色)※ほとんどの店がこのパターン
- 統一されたテイストがある
といったことが特徴的です。
キャッチポイントに関してはワゴンだったりしますが(笑)、入口がオープンな小さい店舗にLow to Highでテイストの統一感のある商品を所狭しと羅列し、空間上部をPPで埋めているあたり、高円寺の古着店と通じるような文脈があります。
これらで、お店全体が楽しい!と感じられるのは間違いありません。VMDという言葉を当てはめないまでも、お店の空間や商品陳列やアピールの仕方自体が販売サービスそのものである!と解ります。
これらを意識していない(表立って見えない)お店もありますが、入口が閉ざされていたり中が見えなかったりすると違和感があり、お客さんもおらず活気がないように見えました。間口も入口も小さいお店は大変!
テーマとテイストのかたまりのように見えるお店が多い。
年寄りの店だからそうなるでしょ!?などと簡単に言い切れないのです。
これは巣鴨テイスト。活発でおしゃれを楽しむお客さんが多く、それら街の顧客の好みからこういうテイストに収れんして行ったのでしょう。問屋さんが一緒だったりするのかしら。
個店→街へ
巣鴨テイストの個店が集積し、商店街を成し、とげぬき地蔵も含めた街全体のテイストとなって非常に独自性の高いエリアとなっているんですね。
個店同志の競争と切磋琢磨が、訴求力の強い商店へと収れんさせているのではないかと感じます。
商店街の小さなお店ならではの雑然とした味がある。狭い通路、商品量のボリューム、埋もれ感。これは街の商店街だから成立します。同じことを今どきのモールや大企業の小型店舗でやってはなりません。大箱の中ではノイズにしかならないから。企業イメージと合わないからです。やっちゃってるお店多いですよ。
街の商店街は衰退の一途。
巣鴨地蔵通商店街を見ると、衰退は感じるもののまだまだ成立しています。そこにはあらゆる品目の商店と喫茶店と食堂が集積され、街と顧客のテイストが合致しているため商店街全体で確固たるライフスタイルを醸成している。今や単なる商店街ではなく、コンセプチュアルなモールであると言えます。
10年後、20年後、人口動態と顧客の生活スタイルの変化でどのように進化するのか変わるのか。変わらないのか。ちょっと楽しみ。
さて、冒頭に触れた地蔵通商店街唯一のおもちゃ屋さん「ますや玩具店」さん。このお店が気になっていました。昔ながらの街のおもちゃ屋さんです。街のおもちゃ屋さんは、この10年くらいで次々と廃業していってますね。ゲームや家電量販店やAmazonにお株を奪われたとはいえ、淋しいものです。
この淋しさを実感するのは、私のような40代後半以上の世代であろうと思います。子供の頃は駄菓子屋にお世話になり、おもちゃを買えるのはデパートか街のおもちゃ屋さんだけで、どんなに小さいお店でもそこが夢の国だった世代です。
デパートのおもちゃ売場もおもちゃ屋さんも、とにかく音がしていました。キンキンキーキーガチャガチャカチンカチンと。キーキーと歯をむき出しながらシンバルを鳴らすサルのおもちゃや楽器のおもちゃ、ゼンマイ仕掛のおもちゃが動き回る音。その頃はまだ革新的に新しかった電子ゲームの音。おもちゃの色は原色中心ですし、12月になればクリスマス装飾が加わるので音に光やクリスマスソングが加わり、なんとも賑やかで華やかだったのです。心の底からワクワクしました。
そんな旧き良き懐かしい街のおもちゃ屋さんを、クリスマスシーズンの今(書いている今はもうクリスマスは終わっていますが)目に焼き付けておきたい!と。
そうか・・今どきはもうそういう音の出るおもちゃは売ってない・・幼児のいる家庭事情も含め、うるさいおもちゃは売れないか・・
音がない。クリスマス装飾もないからキラキラもしてない。埋もれたガラスケースの中も廃墟のよう。これが現実か。
でも商品と陳列のノスタルジックなムードは健在で、おもちゃの、原色の楽しさと可愛らしさがじんわりと目に心に染みますし、天井から巨大な飛行機やらいろんなものが吊られていて賑やかなのが往年の街のおもちゃ屋さんであることをバッチリ感じさせてくれます。
店に入ると店主のおばちゃんが話しかけてくれました。
「何かお探しのものありますか」
「いえ、大丈夫ですよ」
「お店に入って見てくれてありがとね、汚くてごめんね~」
「昔のプラモデルとかありませんか?」
「そう聞かれること多いんですけどね、もう随分前にね、漁るようにして買われていきましたよ」
「やっぱり・・そうですよね~」
なんかホッコリしますよね。
かつてのような音はなくても、少々汚くっても、やさしいおばちゃんのいる街のおもちゃ屋さん。素敵です!孫ができたら、またこういうお店でおもちゃを買ってあげたい!
だから、ますやさん、まだまだ元気でお店を続けてくださいね!
年明けたらまた、何か買いに行きます。