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吉忠マネキン展示会 EXHIBITION 2019

 

6/6・7の二日間で、マネキン事業者3社が展示会を行いました。それぞれにテーマを持った工夫にあふれる展示でなかなか面白かったのでマネキンマニアとしてブログ上で記録として残しておこうと思います。

 

3回目は吉忠マネキンさんの展示会。

 

 

6/6・7の2日間で、マネキン事業者さんが3社も同時に展示会を行いました。考えようによっては、「この2日間で集中してミッチリ新作を見て廻れる!」ということで、多忙なクライアントにとってはかえって好都合かもしれません。前もって告知が出来ていれば。地方の方も出張組んで見にこれますしね!各メーカーさんの違いも体感できるというものです。

 

その点で言うと、今回の3社もそれぞれにテーマや構成の切口が異なって興味深く、この内容を頑張れば1日で全て見て廻ることができる訳ですからなかなか贅沢です!

 

1社目に訪れた吉忠さんは「未来に目を向けている!」ということですから、どんな内容かと見る前から期待も高まっておりました。その吉忠さんの今年の展示会テーマは、

 

「温故創新 >>> 温故創心 SOU・SHIN  こころ踊る未来へ。」

 

これまでの積み重ねをリスペクトしそこから学びつつ、新たな創作と革新にマインドチェンジ!!って感じでしょうか。実際、コンパクトな規模ながらその意気込みが感じ取れる展示会でした。会場は昨年12月にオープンしたばかりの神田明神ホール。境内と1F物販フロアはインバウンドの方々であふれかえっていましたが、まさか2Fでマネキンの展示会をやっているとは夢にも思わないでしょう(笑)

 

 

プロジェクションによる演出もカッコイイですな。
プロジェクションによる演出もカッコイイですな。

 

のっけから、判り易く未来のマネキンを見せて頂きました!

現段階ではまだプロトタイプもプロトタイプ、お金もエライかかるし動きも限られますが、喋るし動く!歩くマネキンは、大腿の付け根のメカが実に未来っぽくてカッコいい・・・

動画を撮りましたが、jimdoブログでは動画は埋め込めないみたい。残念!

 

今はまだぎこちないのですが、勿論目指すのは「ロボットではなくマネキンが動いている」という姿だと力強く仰っていました。

 

"QLOGO"クロゴという「新技術プロダクト」の展示。ファミリーマネキンは首にカメラが内蔵されていて、目の前にいる人を感知し音声認識して簡単な挨拶やお話ができます。と言っても、現段階ではPCでプリインプットされた「想定問答」を答えてくれる感じですが、サイネージに映し出されたキーワードを選んで話しかけると、ほっぺをピンクに光らせながら答えてくれます。「ソレハ、キギョウヒミツデス」

 

動き回っていても、完璧に胸元にスポットが当たり続けています!
動き回っていても、完璧に胸元にスポットが当たり続けています!

 

そして、これが今展示の目玉「動き回るディスプレイ」であります!!

動画撮ったのにお見せできなくて残念!!

 

昇降ステージ区画の上に結構大きい専用スペースを作っており、トラスで区画された通路を、PCに入れた事前プログラムにより複数台がぶつかることなくスムーズに、息もピッタリ走行します。しかも、演出照明が赤外線追尾型のスポットで、動くマネキンに対しスポットも動いて照明を当て続けるという!

 

動くステージは、いわゆる物流倉庫の無人搬送台車です。これにマネキンのシャフトを取り付けてます。マネキンだけでなくディスプレイされた棚まで動いてました。

 

こういう動くディスプレイ、有効だと思うんです。昔から、「毎日居場所が変わるマネキン」ってのをやってみたいと思ってました。今日はメイン回遊導線の真ん中にいるけど、明日はトイレの前、昨日は売場の真ん中にいたな、みたいな。それを、この子は一日中自分一人で動いて回ってしまうけです。衝突防止機能も付いてるし、通路さえ開けてあれば移動します。楽しそう・・・

 

ショッピングモールなんかではリアルに使えそうだと思います。広い回遊導線に、ゴツいVP台を組んで周りをポールで囲う・・みたいなことをやるより、キャッチ―で目を引きそうです。なんなら、声をかけて頂ければ店舗までご案内してくれるかもしれません。

 

最大の問題は「ちびっこが突然寄ってくる、乗っちゃう、引っ張っちゃう」という永遠の課題にどう向き合い対処するかですね。前職でも、ちびっこの皆さんには色々やられました・・ 動いてるもので怪我でもされたら、完全に運営側の責任ですから難しい問題です。この展示のように、専用のブースを設けないといけないのかもしれません。

 

あー・・楽しかった・・

 

 

"Slim Lady"というスレンダーボディ。実にシンプルなボディですが、スリムというだけあり細くて薄い!今どきのスラっとスタイルの良いティーン用にも使えそうな商品です。腕を付けると実に良い存在感。当然、無頓着に着せるだけだと貧相だったりぶかぶかになるかもしれず、着るモノを選ぶでしょう。安室ちゃんの衣装展示会で採用されたと聞き納得!

 

 

今回の展示でいちばん驚かされた"Genderfree"というボディ。これまでのレディス用・紳メンズ用という分類も垣根も超えた使用ができる画期的なプロダクトです。これまでもジェンダーレスっぽいメンズマネキンとかそういうのはありましたけど、どちらでもというのはなかったような。メンズ用の肩幅を詰めたり、薄くしたり、胸元のラインを調整したり・・という過程を経てたどり着いた造形の妙。地味だけど革新的。

 

ウィッグや衣装の選定もまた上手いのですが、ミラーと両面性を感じさせる展示が秀逸と思います。同じはずのボディが個別にはそれぞれ別物に見えますし、同時に見ると同じにも見えます。男女どちら?と聞かれるとやはりどちらにも見えるし、個別にみると男女に違えても見える。ん~~不思議。

 

サイズの問題さえクリアすれば、「着映え」「忠実な着装感」を求めないでよいショップ、ユニセックスの売場では使いやすいシリーズとして重宝されるかもしれません。堂々と使われて店頭で並んでいるのを見てみたいものです。

 

ほとんどカップルにしか目がいかなかったという・・・
ほとんどカップルにしか目がいかなかったという・・・

 

マネキン事業者さんらしい展示。大人らしいエレガントラインの"Mellow"にちょっと感傷的にうつむいた座りと直立のバリエーションが。そして、抱かれて寄り添うカップルもできました。カップルマネキンは下から見上げるととてもいいムード。「愛ある人」というキャッチコピーになんだか納得の造形。そして合わせる顔の角度と鼻と口の距離感が絶妙・・・リアルマネキンではないけど抽象マネキンでもありません。顔の、下鼻と口元が人間みたいで、そこだけフォーカスしたように見えます。ペアルックにも見える二人のコーディネイトもあり、仲良く寄り添い感が半端ありません。彼氏のマフラーが口元を隠していてちょっと残念でした。カタログ写真だと、彼女マネキンは単体でも使用できそうですが、彼氏マネキンは単独使用はムリそうです。。

 

映えてるのでインスタでも使わせて頂きました。
映えてるのでインスタでも使わせて頂きました。

 

Mellowさんと共に多くの方に激写されたであろうもう一つのディスプレイですが、健康的にスポーティなシリーズ”Vivian"。昨今はどちらのマネキン事業者さんもスポーツマネキン花盛りですが、こちらは健康的に自然体がキーワードであることからも解るように、スポーツ系以外でもテイストは選べどランジェリーでも使えそうですし、用途は広そうです。ただし、ここまでの規模ではなくとも高低差前後奥行の演出を含む複数体でのしっかりとしたコンポジションと、ある程度広い舞台が理想でしょう。

 

上にちゃんとシャワーヘッドがあるんですよね。

 

アデルだけの本気の展示会希望✊✊✊!!
アデルだけの本気の展示会希望✊✊✊!!

 

そして、個人的に感激をもって見ずにはいられなかったのがこちら。"Premium ADEL"という展開でしたが、90年代に数々のショーウィンドウでその姿を見ることができた天才原型師ジョン・テーラーの手による真アデルの復刻体です。吉忠さんに保管されていた製品から直接型取りして、各1体づつ復刻製造したそうです。

 

私が1991年に伊勢丹に入社してから数年後、装飾担当として新宿店のショーウィンドウや1Fの中央ストリートVPに携わった際、追分交差点のショーウィンドウとその背景として控える「新宿店」を、ウィンドウの中のたった1体のアデルが場を張って店を背負っている姿を見て驚愕し、そのパワーととんでもない磁力に虜になりました。その磁力の源は、まぎれもなく造形なんですよね。

 

着るモノも選ぶし、靴は履かせにくい。ヘアもメイクも、瞳の描き込みもとんでもなく凝らねばならないけど、それだけの価値と効果が確かにあり、当時の伊勢丹のビジュアルアイデンティティは、ファッションポスターとアデルだったと言っても過言ではありません。まだ新宿伊勢丹が日本でファッションの最先端を走っていたあの頃、海外コレクションで発表されたラグジュアリーブランドやアドバンスな新進気鋭のデザイナーのプロダクトをどこよりも早く仕込んでどこよりも素敵に着せて立たせていられたあの時代・・・懐・・・ 

 

この経験から次第にマネキンマニアになっていったのでした・・・

ここに展示されていたのは、まさにその頃使っていたアデル達。懐かしくて神々しくて感激でした。

 

この復刻体はレンタルできるようですが、1体づつなので素のまま保管するしかないのかしら。1体だけキチンとメイクされて服も着て経っていたけど、私は全員本気の姿で見たかった!!床に同じ自分と高さで置かれているのではなく、下から仰ぎ見たかったな・・・

 

日本でのリアルマネキンの復権を切に願う!!
日本でのリアルマネキンの復権を切に願う!!

 

その他にも3Dプリンターによる複雑で面白いヘッドパーツとか、エレガントなVMDツールとか、ハイエンド感あふれるテーブル什器やスポーティなメッシュ什器など、ピンポイントだけど個性的なリース什器の展示もありました。

VMDツールはここで解説しようと思っていたのですが、岡田さんと中西さんとお喋りがはずんでうっかり写真を撮っていませんでした。。

 

 

そして、見終わってからコッソリ3Fへご案内いただき、VIP席から展示場内前景を眺める機会を頂きました!!

コンパクトな会場ですが、メリハリの効いたテーマ括りと展示構成がよく見て取れます。

 

こうして振り返ってみますと、展示会のテーマである「温故創新」という意味がよく解りますし、まだ粗削りだったり実用的でない部分があっても新しい技術とか取組み、それもリアルにマネキンを用いたものをこうして実際目の前で見せて頂くというのは楽しいし嬉しいな~・・まだまだ色々な可能性があるんだな~・・とつくづく感じた次第です。

 

 

 

今日が大阪展示の最終日だと思いますが、吉忠の皆さま2週に渡りお疲れさまでした。