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遠隔授業を終えてみて・・・

 

2か月半ぶりのブログ更新。

 

世の中の状況は2か月半たっても変わりませんね・・・

ウィズコロナという便利な言葉が生み出されたりして企業活動は恐る恐るリスタートしてきているけど、社会は構造転換の歯車が一気に進みだして私が身を置いている小売・ファッションビジネス業界もどんよりした空気に覆われています。そんな状況なので弊社の仕事も相変わらず蒸発したまま戻ってくる気配がありません。。

持続化給付金が入ったので少しホッとしたものの、まさに持続できるかどうかギリギリの線になってきました。。

 

でも、幸いにしてこの2カ月半は仕事でかなり充実した時間を過ごしておりブログ更新どころではありませんでした。。

 

大学の非常勤講師としての、初めての授業です。

 


 

ファッション系の大学なのでクリエイションや演習の実技授業が多く、これらは出来るだけ対面で行いますが、対面でなくても出来る授業は遠隔でということに。こればっかりは仕方ありません。私の受け持ち2科目は完全に遠隔対応OK。

ということで、完全遠隔での講師デビューとなりました・・

 

本来は15回ある授業ですが、開始時期が後ろ倒しになったこともあり12回になりました。対面で計画していた演習回をオミットすればカリキュラム的には問題なく対応できそうでした。

問題は遠隔授業の方法で、下記のいずれかを選択することに。

 

①zoomでオンライン ②zoomで録画配信 ③PDFテキスト配信

 

③を基本に、時々①②を織り交ぜるのもアリということでした。

学校から通達が来る前、zoomで授業やることになるかも!ということで、zoom飲み会(サシ飲み(笑))をやってみたり、家族でPC使い分けてシミュレーションしてみたりしましたが・・・結局③PDFテキスト配信を選択。

 

zoomの場合は学生の通信容量保持の観点から時間制約があるため、私がやりたいと思っているコンテンツが伝えきれないと判断したのが理由の一つ。もう一つの理由は、私の家庭の事情によるものです。

 

以前ブログでも書いたのですが、私が講師として遠隔授業を開始する前から、娘二人(中2と大2)が生徒として遠隔授業を開始していました。大学は全ての授業が完全遠隔。中学は7月から対面が始まりましたが、それまでは遠隔でした。

 

そんなわけで、私は娘二人が遠隔授業を受ける様子を観察していたんです。大学の方はzoom主体で、長女は毎日時間割通りにPCにかじりついて朝から夕方まで真面目に授業を受けており、先生の声がずーっと漏れ聞こえてました。初めはやり方がわからん!とかテキストのダウンロードに時間かかる!とブーブー言ってましたが、すぐに慣れてました。どちらかというと先生の方がダメなようで、通信が切れて突然いなくなったり、そのまま戻ってこなかったり、テキスト配信が授業に間に合わなかったり・・ということがちょいちょい起きていたそうです。

 

我が家のwifi環境も実は良くなくて、工事配線の問題なのかよく解らんけどちょいちょい通信が切れる。ただでさえそんななのに、娘二人と私が同時に遠隔授業受けることになったらマズイね、ってことでwifiルーターも新調したりして。。新調したのに通信状況はあまり改善されず、長女の大学のzoom授業では通信が度々切れて、長女が怒ってましたからね・・

これで私がzoom授業始めたら、私のも長女のも切れちゃってどっちも授業にならん。。というのは絶対に避けねばなりません。

 

長女は授業開始時はリビングルームで授業を受けていたので、zoom授業を横からコッソリ見ることができました。見ていると、先生の喋りが案外「え~~・・」とか「んん~~~・・」とか、資料の画面切替にもたついたりでダルダルなことが多く、ん!?きっと自分もこうなるぞ!!ってね(笑)  動画配信の授業は倍速で飛ばされたりするし・・・

遠隔の講師が全員ユーチューバーみたいな動画を配信するなら観る気もやる気も起きるのに!みたいな投稿をtwitterにしている人もいますが・・難しいなあ(笑)

仕事としては、zoom型のセミナーもやってみたいんですけどね。

 

そんなわけで、自分はテキスト配信のみの授業を選びました。

教科書はないので、テキストは自分で作るしかありません!!

 

我が家も、生徒側も、通信容量を軽減できる。

余計なことを喋らずにすむ。

事前にキチンとテキストを配信すればまずトラブることはない。

なにより、テキストの内容を充実出来る。

 

かくして、長女はベッドルームで、次女はリビングルームのPCで、私は子供部屋の長女の勉強机で、それぞれの遠隔授業に対応していました。私はテキスト配信するだけですが・・・ そのテキスト自体を一から作らねばならんのです!しかも2科目分!!

 

これが思っていたより大変でした・・・・

2カ月半、授業開始から終わるまで、ほとんど毎日机にかじりついてテキスト作成に追われる日々となりました

 

 

学校からは、パワーポイントを用いた教材を作りPDFで配信するよう指示されました。テキストの見本ももらいましたが、企業のプレゼン資料みたいなやつ。zoomの補足資料ならいいけど・・・

 

読みやすさ、わかり易さよりも内容の充実を図りたいと思いました。

コンテンツは妥協せずに入れるし、無理に切り飛ばさない。写真や図表はたくさん入れる。そして、私のしゃべくりは全て文章にしてテキストに入れる!!要は文字だらけです(笑) これについてこれるか・・

 

飛ばし読みする人、パパっと見る人はそうしてもらって構わない。

面白いと思ってくれる人にはじっくり見て、読んで欲しい。そういう人のレベルに合わせたテキストを作りたい。具体的な実務体験と写真をいっぱい詰め込んで。

  

 テキスト作成に際して自分の中で決めていた基準は、

自分が欲しいテキストを作る」こと。

 

前職時代に、こんなテキストがあったらいいのに…と思っていたそのイメージ通りの内容にすること。痒いところに手が届くものにすること。こういう本が売ってないから欲しかったんだよ!っていう内容にすることです。そして、今時の外部環境を追随・反映することと、百貨店視点だけに陥らないようにすること・・・に気を付けました

 

内容と構成は事前に練ってあったし、初めから頭の中に出来ていたものなのであまり苦労することはないかな・・・と少々甘く考えていましたが、全く!そうはいかなかったですね。

 


 

授業日は水曜日の午後に2科目続けてでしたが、この2カ月半の暮らしぶりを書くとこんな感じ。。

授業①は「リテールビジネスにおけるVMDマネジメント」

授業②は「リテールマーチャンダイジング」です。

 

(水) 授業日  問合対応・前週課題まとめ、採点、次週テキスト草案

(木) 授業①テキスト制作 ←気が散る日

(金) 授業①テキスト制作 ←気が散る日

(土) 授業①テキスト制作  授業②テキスト制作

(日) 授業②テキスト制作

(月) 授業②テキスト制作

(火) テキスト最終確認・課題作成・アップロード

 

テキスト自体はパワーポイントで作りますが、パワポに入る前にその回の全体内容と構成をシラバスを基に頭にの中で整理します。VMDマネジメントの方は参考になる書籍とか持っていないので(笑)、これまでに作った教材から流用したりもしますが、新規で作るものが圧倒的に多く、自分の頭にあることをひたすら書き起こすのみ。一方のマーチャンダイジングの方はそうもいかないので参考になりそうな手持ちの書籍をババっと眺めて上手く引用できそうな部分や図表をチェック。それも含め、忘れないうちに細かな要素をスマホのメモ帳アプリにバーーーっと打ち込んでいきました。その際、具体的な内容も思いつくまま書いていきますが、最後の「まとめ」で書くことを最初に決めておくのをルーティンにしていました。その方が全体がうまく纏まると思ったからです。

 

そんな感じでおおよそ構成が決まったら、スマホのメモをGoogleドキュメントにエクスポート。パワポのテキストの表紙、目次を仕立てたら、Googleドキュメントのメモをページ毎にパワポにコピペ、それを基にして更に細かな記述に清書し、図表や引用をレイアウトして行きました。文章を喋り口調で書くのは割と得意なので(このブログの感じ・・)、パワポに作業が移ったら勢いで仕上げる感じでした。最後に構成をチェックして文章を推敲。

 

とにかく、どちらかというと(遥かに)手慣れたVMDの方を先に(少しでも早く)作って、時間のかかるマーチャンダイジングの方をなるべく土日から仕掛かるように頑張りました・・・7月からはありがたいことにVMD顧問の方の週一出張が復活したので、1日分余裕が無くなってさらに締切に追われる日々となります。。

 

 

自分が欲しい図表や模式図が調べても結構ない。ベーシックな図表や専門的な図表、ぜひ生徒さんにご紹介したい図表は、私が前職を退職後に買い漁って読み漁った様々な書籍から積極的に引用させて頂いたものの、それでもかなりの量の図表と模式図を自作することになって、これがテキスト作成の時間を喰う元凶となりました。とか言いながら、これがすごく楽しかったんですけどね(笑) それにこれから仕事で使えるし。

 

頭にあるイメージと構成をとにかく図として描いてみて、描けたら即清書。

自分の手持ちの図表が一気に増えて、とてもよい機会になりました。

 

頭の中のイメージをぐわっと描き出して、それをエクセルで清書・・これだけで3、4時間かかる。。
頭の中のイメージをぐわっと描き出して、それをエクセルで清書・・これだけで3、4時間かかる。。
演出空間の規模と分類を解説。私が昔から好む模式図です。
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展開分類・ゾーニング・レイアウトをマイショップになぞらえて解説。展開分類とゾーニング、VP配置の導き方を、様々な事例で解説しました!
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最終的に、2科目のテキストページ総数は800枚を超えました

 

初めは、持ち時間1コマ90分の中で「テキストを読み、課題を書いて提出」という流れでどのくらいのテキストボリュームが最適なのか分からず20ページを目安にしてみたものの、自分がぜんぜん物足りなく感じるのと、授業開始時間から10分ほどで課題を提出する学生が続出したことから、「20ページだとテキスト流し見で5分、課題記入・提出で5分=合計10分が最短」と予測し、まだ増やせる・・と踏んで徐々にページ数を上げていきました。

 

授業の時間は、テキストが設定時間通りに配信されたことを確認し、ストリームに授業開始投稿をした後は、問い合わせ対応で待機です。私も生徒もシステムに不慣れな前半は、DMで結構問い合わせが入りましたし、私のアップロード不備なども起きて応急対応が発生しました。これら対応と同時に、開始1時間までにされた課題提出の時間と数を毎回記録していました。何か傾向が見出せるかな、と思って。判ったのは、どんなにページを増やしても早く出す人数の割合はあまり変わらない、ということ。

 

とにかくテキスト内容の充実を重視して、読むのが面倒でも、時間をとらせても、対面かそれ以上の濃い授業にしたいと思ったし、内容の濃さを望む生徒が1人でもいるなら、その生徒のために濃いテキストを提供したいと考え、ページ数が増えてもテキストの内容に絶対に手を抜かないことに決めました。結果的には、遠隔授業にしてはテキスト内容が充実している・・と好意的に受け止めてもらえたようでした。

スマホでの受講だとキツイ体裁のテキストなので、それだけは申し訳なかったですね。

 

提出するのが早くても、課題を出した意図を見抜いて的を得た内容をコンパクトに要領良く書く人もいて、これはこれで大したものです。

 

「場の役割(VP・PP・IP)」を扱った回。やっぱりこの内容は重要だと思って頂けたようです。この回は表紙と目次を除いて48ページ。
「場の役割(VP・PP・IP)」を扱った回。やっぱりこの内容は重要だと思って頂けたようです。この回は表紙と目次を除いて48ページ。

 

授業も後半に入ると、学生の皆さんは他の対面授業とのスケジュール的な兼ね合いや、各授業の課題がチョー大変になってきたせいか、私の授業の課題提出がどんどん遅れる傾向と、欠席する学生さんが出てきました。これは仕方ありません・・・

このくらいの時期になると、全教科の中でウェイト付けがされていくものですからね。実際私もそうでしたから良く解ります。でも、最後まで一切手を抜かず、課題を出した私の方が勉強になるような内容を提出してくる学生もたくさんいるので頭が下がります。

 

演習やグループワークが出来なかったので、最後まで連続して受講してくれれば、提出課題の作成を通し、最終的に自分自身がやってみたいと考えるマーチャンダイジングやVMDが具体的な姿として描けるようにしてみましたが、想定以上に皆さん一人ひとりよく考えてくれました。

読んでいてすごく刺激的だし、よく勉強してるのが判ります。

 

そして8月に。自分なりに工夫しながら全12回を終えたけど、実際の授業としては・・・どうだったんだろうか。神のみぞ知る。神は受講してくれた生徒たち。

 

幸い、VMDマネジメントの方は、生徒の多くから最終の提出課題中に、遠隔授業なのに分かりやすかった、楽しくて授業に入り込めた、今まで何度も授業に出てきたVMDのことが初めてちゃんと理解できた、想像を膨らませて課題を考えるのが楽しかった、12回で終わるのが残念・・などの嬉しいコメントをたくさんたくさん頂いて、読んでいて本当に涙が出ました。嬉しかった・・・

 

2カ月半、終わらないマラソンみたいだったけど、一気に報われ、安堵しました。お役に立ててこんなに嬉しいことはありません。

 

VMDマネジメントは選択科目だったから受講者は多くはなかったけど、その多くがテキストを楽しんでもらえたなら本当に作った甲斐がありました。大学の全授業のシラバスを見ましたが、VMDを取り上げ解説する授業のなんと多いこと!それだけVMDというのはファッションビジネスと切っても切れず、生徒さんの関心も高いし、内容的にも楽しんでもらえるんだ!ということが改めて判りましたね。次回ももっと充実させたい!と心に誓いましたし、受講者が寄せてくれたコメントを、これからの心の拠り所、戻るべき原点として大切にしたいと思います。

 

同時に、必修科目のリテールマーチャンダイジングの方はきっとつまらなかったに違いないことも判ってしまったんですけどね(笑) 総まとめの最終回が最低出席率記録を更新!最後にめんどくさい課題を予告したせいもあるかな。。

 

これも意外に楽しんで頂けたらしい「マネキン」の回。マネキンマニアの拘りを前面に打ち出した写真いっぱいのテキストにしました。38ページ。
これも意外に楽しんで頂けたらしい「マネキン」の回。マネキンマニアの拘りを前面に打ち出した写真いっぱいのテキストにしました。38ページ。

 

現に連日、遠隔授業の話題が新聞やネットニュースで話題になっています。当初はリモート環境や付随器具設備、授業環境の不平等といった話題が多かったけど、最近は大学の遠隔授業の提出課題が多すぎて学生がパンクしている・・という話題が多かったですね。提出課題は長女も連日ヒーヒー言いながらやってましたが、基本家に引き籠っているので、集中して早々と終わらせていました。でも、殆どの学生さんがバイトしてたり遊ぶ予定もあったりという状況だったらホント、寝る間もないでしょう。はやく普通の対面に戻る日が来て欲しいものです。

 

コロナ禍で他の仕事が蒸発し家に引き籠っていたから毎日テキスト作成に打ち込めたけど、コロナ直前は仕事量が上向きかけていた頃だったから、そのままの流れだったらテキストの有無はともかく完遂できていなかったかも。。これはこれで何か運命的なタイミングを感じてしまいます・・

 

で、私の授業はどういう評価だったのか・・・

結果は後日、受講者アンケートを経て学校からフィードバックされるらしい。私は前職時代、昇格研修のたびに何度も上司部下同僚による多面評価のフィードバックをもらってきたけど、恥ずかしながら、喜ばしい評価をもらったためしがないんですよね(笑) こわいなー。。

 


そうそう、

何人かの学生さんと、「遠隔だけど遠隔ならでは」のカタチで、メールや課題提出を介したやりとりでの熱い質疑応答や、楽しいチャットがありました。学校だとオフィスアワーというのがありますが、メールやチャットも遠隔授業だとオフィスアワーにあたりますよね。テキスト作って配信して課題を採点して・・だけだと、ホント、血もなんも通ってないし、ただの通信講座。事務的なやりとりにしか感じません。学生さんはテキストを読んでくれて、色々考えてくれているに違いないのにこちらは全然わからない。

 

実は、学生さんも同じことを思っていた・・ということも判りました。

 

遠隔授業を終えてみて・・・

どこまでもバーチャルでしたが、それでもコミュニケーションが取れるのは本当に嬉しいし、たった12回だけど受講してくれた生徒さんにキャンパスでお会いしたいという気持ちが高まりました

あと一つくらい他の学校掛け持ちしてみたいな・・なんて思ったり。

 

でも、配信型とはいえ付帯業務で結構な時間食いますから、それも含めて時給換算にすると…という、よく言われる問題も実感した次第です。

 

来年はどうなるのかな・・・

対面授業に戻ったら、今年使ったテキストはもう使えないし、紙ペラの資料しか配布しない予定!!